【要約と感想】D・カーネギー『人を動かす』

【要約】人を動かすには、謙虚になるのが肝心です。

【感想】めちゃめちゃ売れてる本だ。手許にある新装版は1995年に出版されているが、2015年までに95刷を数えている。今も伸び続けているのだろう。旧訳版は1958年の初版から24年で169刷だそうだ。馬鹿売れだ。まあ、企業の研修会などでむりやり買わされている人もかなり多いんだろうけどね。

内容は、さすがの古典というか。売れているだけのことはあるというか。極めて単純で分かりやすい命題と、それを証明する豊富で説得力ある実例。実例に超有名人と無名の市井人を織り交ぜる配慮。必ず成功と幸福に辿り着くという確信と安心のメッセージ。個人的には、内容そのものに感心するというよりは、メタ的に、著者の構想力と表現力のほうに関心をもつ。本書を見習うとしたら、おそらく内容そのものに感心している場合ではなく、メタ視点から分析するほうが有益ではないかと思った。私も自己啓発本を書くハメになったら、本書を大いに参考にしよう。

ちなみに付録として収録されている「幸福な家庭をつくる七原則」は、おそらく本家のアメリカでは男女役割分業を固定するという観点から削除されたのだろうが、儒教意識が抜けない日本では逆に問題なく受け容れられるということなのだろう。

D・カーネギー『人を動かす 新装版』創元社、1999年