【要約と感想】島沢優子『部活があぶない』

【要約】体罰では才能は伸びません。子どもの自主性が決定的に重要です。
部活で疲弊しているのは子どもだけではありません。先生も苛酷な労働を強いられています。
部活がブラック化する原因は、勝利至上主義にあります。保護者も顧問も学校も勝利至上主義の下、子どもの心と体を犠牲にしています。部活で得られる大切なものは、礼儀とか我慢などではなく、かけがえのない仲間です。

【感想】毀誉褒貶が激しい本になるんだろうなあと予測したら、案の定、amazonレビューとかとてもおもしろい。本書を酷評している人の日本語読解力が壊滅的に低く、内容をしっかり読めていないことなども含めて、とても興味深い現象に感じた。いやはや。

いま、「チーム学校」とか「働き方改革」の名前の下、部活動の位置づけも急速に変わりつつある。教師の負担が減るのは、いいことのようには思う。
とはいえ、代わりとなるはずの「部活動指導員」の扱いに問題を抱えたままであるのも、確かだ。地域のクラブチームも、部活動の代わりになるほど育っているわけでもない。これから具体的にどうすればいいのか、知恵を出し合いながら模索し続けていかなければならない、とても苦しい段階にあるように思う。社会全体の支えが必要なのだが、消費社会に毒されて公共性が削り取られた現代日本にそれが可能かどうか、さてはて。

体罰に関しては、教育原理に関わるものとしては、ロックやペスタロッチがある程度必要なものとして語っていることが気にかかる。日本固有の問題と決めつけるよりも、教育固有の普遍的な問題として考えるほうがいいのかもしれない。

島沢優子『部活があぶない』講談社現代新書、2017年