【要約と感想】荻上チキ『ネットいじめ―ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』

【要約】ネットいじめを問題にする人たちは、現代社会の特徴を何も理解していません。ネット上のいじめは、単に現実の人間関係を反映しているに過ぎません。学校自体のいじめ体質を改善しないのに、ネット上のいじめだけなくなるわけがありません。
本質的な問題は、中間集団におけるコミュニケーションのあり方にあります。「キャラ戦争」です。コミュニケーションのあり方が変わったのは、これまで有効に機能していた「近代」が終わりつつあるからです。表層的な現象に目を奪われず、時代の本質的な変化を理解した上で、メディアとつきあう力をどうつけるか考えていきましょう。

【感想】11年前に書かれた本なわけだが、この間にネット上の環境と状況が劇的に変化していることに唖然とする。本書では掲示板やプロフの現状が分析されている。しかし周知の通り、スマホの普及によってケータイのプロフ文化は崩壊し、各種掲示板は衰退の一途を辿っている。いまやネット上のコミュニケーションはlineとtwitterとインスタに移り、コミュニケーションのあり方も大きく変貌した。それらの天下も長くは続かないだろう。時代の変化が、早すぎる。

ま、大きな目で見れば、「近代が終了するのに伴って人間関係やコミュニケーションのあり方が変わる」という命題自体は有効なようにも思われる。どんなに新しいツールが登場しても、近代の「1×n」コミュニケーションの有効性が低下して、「n×n」コミュニケーションへ移行するという本質そのものは変わらない。教育や学校は、この時代の変化を真剣に考えなければ、必ず滅びるのであった。

荻上チキ『ネットいじめ―ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』PHP新書、2008年