【要約と感想】矢野耕平『iPadで教育が変わる』

【要約】iPad導入によって教育の本質的な部分は変わりませんが、現場の教師が教育の本質を考え直すきっかけになるでしょう。ちなみに教育の本質とは、子どもが一人称で「教わり、育つ」ということです。
iPad導入によって教育が劇的に改善されるなんて、そんな都合のいいことは起こりません。拙速な導入は危険です。ただの「ツール」だと理解して導入すべれば、教師の雑務を軽減し、子どもと向き合える時間を増やすという効果はあるかもしれません。

【感想】本書は9年前に出版ということで、日進月歩のICT業界の流れの中で、古くはなっている。まあ、教育の本質をどう考えるかというところでは、特に古くはなっていないかもしれない。「ただのツール」という認識は、今でも、今後も有効な視点だと思う。

ところで私自身も、現在は授業の中にデジタルツールを導入している。iPadではなく、学生自身が持ってくるスマホを使う。主にGoogleアンケート機能を使って、予習をさせたり、小テストを行なったりしている。「ただのツール」として認識して利用しているわけだが、確かに有効活用できているような気がする(自画自賛)。
ICTツールの利用については、今後も日進月歩でいろいろ出てくるのだろう。個人的には乗り遅れないようにアンテナを高くしていきたいところだ。このあたり、意外に学生のほうが保守的だったりするのは、興味深いところではある。

そういう観点からすると、まあ、正直ちょっと期待外れではあった。もっと先進的な取り組み(たとえばネットワークを大々的に利用)が紹介されているかと勘違いしていた。iPadみたいなツールは、単なるマルチメディアとして利用するのではあまり意味がなく、ネットワーキングの利用が本領だと思うのだ。まあ、ないものねだりなので、自分でがんばるしかない。

【言質】
「人格」という言葉に関する言質をとれた。

「子どもたちのみならず、大人たちまでもがデジタル端末を全能の神であるかのように妄信してしまうと、子どもたちの人格をつくりあげるうえでもっとも根源的なものが失われてしまう恐れがあるのだ。」(73頁)

矢野耕平『iPadで教育が変わる』マイコミ新書、2010年