【要約と感想】奥地圭子編著『子どもに聞くいじめ―フリースクールからの発信』

【要約】実際にいじめを経験した子どもたちの声に耳を傾けてください。「頑張れ」というメッセージは、単に子どもたちを潰しています。親や教師の初動ミスが致命傷になります。まずは子どもの話をしっかり聞く姿勢が大事です。説教するのは逆効果です。政府や教育再生会議のいじめ対策は、まったく効果がありません。現実を見ていません。いじめとは戦わずに逃げるのが肝心です。「学校に行かない」という選択肢を真剣に考えましょう。

【感想】10年以上前の本で、出版当初から現在までにずいぶん状況は変わっている。本書に示された見解の有効性が証明された形で、現実は変わっている。いじめに対しては、もはや真剣に立ち向かう価値などないということでファイナルアンサーだ。まずは逃げるのが肝心だ。子どもの安全と安心を確保してから、さあ、じっくり解決に向おうというのが現在のセオリーとなりつつある。
そういう後知恵を持ってみると、本書で子どもたちが語る具体的事例で、両親や教師が実際に採った対応はあまりにも稚拙ではある。状況をよくする要素が、まるでない。とはいえ、それは後知恵だから言えることではあって、渦中にある人たちにとっては真剣な対応だっただろうことも分かる。その真剣な対応が逆効果でしかなかったことは、教訓としてしっかり記憶しておかなければならない。いじめには立ち向かう価値などない。逃げるのが肝心。
不幸を繰り返さないために、教育関係者一同、しっかり教訓を共有していかなければならない。

不登校に関しては、2016年に不登校に関する調査研究協力者会議から「不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~」が提出され、それを踏まえて文部科学省が「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」を通知した。注目されるのは、「フリースクール」の重要性が大きく打ち出されたことだ。「学校に行く」ことが最終解決ではないことが正式に表明されたことは、とても意味があることかもしれない。答申と通知を踏まえ、東京シューレをはじめとするフリースクールの取り組みに対してこれからますます注目が集まることになるだろう。フリースクールへの支援と協力の体制についても、教育関係者一同、真剣に考えていかなければならない。

奥地圭子編著『子どもに聞くいじめ―フリースクールからの発信』東京シューレ出版、2007年