【要約と感想】池上彰『池上彰の「日本の教育」がよくわかる本』

【要約】これ一冊で、あなたも「教育通」!

【感想】まあ、いいんじゃないの?というのが教育学のプロとしての感想。アラを探してやろうと意地悪な目で読んだけれども、明らかな事実誤認とか論理の飛躍などは見られなかった。まあ大学の教職課程でしっかり学ぶ程度のレベルではあるけれども、実に分かりやすく書いてある。教職を目指す学生にとっても、いい本かもしれない。

そんな分かりやすい文章を書く池上彰が、こう言うのであった。

「この更新講習(教員免許)は、主に夏休み期間に大学で行なわれています。研修の先生は大学の先生です。この大学の先生、教えるのがうまいとはお世辞にもいえません。」(179頁)

ははははは。いや、笑っている場合じゃない。ほんと、申し訳ありません。精一杯、分かりやすく、充実した時間になるよう、努力する所存であります。今年の講習は、8/6と8/7、日本で世界教育学会が開催されているまっただ中で行なわれます。頑張ろう。

あと、本書は2014年時点の情報を元に書かれているので、2015年末に出た3つの答申と2017年に改訂された学習指導要領についてはもちろん触れていない。かなり状況は変わってきているので、教育関係者はしっかり情報をアップデートしておきましょう。

【メモと備忘録】

「安倍政権の「教育再生」も、学校現場や教育現場の検証から改革案を作成しているというよりも、思い込みや印象論にもとづいている面があるのではないでしょうか。」(7頁)

「教育に限ったことではありませんが、特に教育においては、「昔はよかった」的な印象論で議論が行なわれることが多々あります。」(39頁)

「教育委員を住民選挙で選ぶ、当初の教育委員会制度に近づけることはできないものでしょうか。(中略)住民が選挙で選ぶようになれば、子どものいる親はもちろん、これまで教育に関心のなかった人たちも、自分たちの地域の教育がどうあるべきか真剣に考えるようになるでしょう。」(256頁)

池上彰『池上彰の「日本の教育」がよくわかる本』PHP文庫、2014年