【要約と感想】曽和信一『希望の「教育と福祉」―子どもの社会的養護と家庭福祉を考える』

【要約】いま、子どもや若者たちから「希望」が失われています。子どもに「希望」を取り戻すのが、教育や福祉の仕事です。
保育・施設養護・母子生活支援施設・児童自立支援施設について、具体的に理念・制度・歴史・問題・今後の展望を考えました。かつては狭い範囲の限られた子どもたちを囲い込む慈恵的な福祉政策でしたが、現在の制度は全ての子どもや保護者を対象とした幅広い支援体制の構築へと関心を変えてきています。

【感想】社会的養護の全般を「希望」というキーワードで読み解こうとする意図は興味深かったけれども、具体的な制度の読み解きのところで「希望」という概念がどう絡んでくるかがイマイチ見えにくい記述になっていたところは少々食い足りなかった感じがする。
それから「規範意識の低下」や「少年犯罪の低年齢化」については、具体的な統計資料を根拠とした否定的な見解が各所から出されているはずで、客観的な吟味を経ずに無条件で前提している記述に対しては、多少どうかなあという感じもする。
が、まあ、些細なことなのかもしれない。いま困っている子どもや大人立ちがたくさん存在しており、彼らをどのように支援していくのかの知恵が求められているのは確かなのだった。過去の経緯と現在の制度を知り、そして未来へ「希望」を持つために、本書は役に立つのだろう。

曽和信一『希望の「教育と福祉」―子どもの社会的養護と家庭福祉を考える』阿吽社、2012年