【要約と感想】山脇由貴子『教室の悪魔―見えない「いじめ」を解決するために』

【要約】現代のいじめは極めて巧妙に行なわれるので、親や教師にはまったく見えません。が、必ずサインは出ています。サインを受け取ったら、無責任に正義感を振りかざすのではなく、子どもの立場に立ち、安全の確保を最優先に考え、現実的・戦略的に解決していきましょう。子どもは学校を休ませ、大人は粘り強く組織的に対応しましょう。いじめを解決するのは、子どもではなく、大人の仕事です。
見えないいじめを「見える化」するためのチェックシート付。

【感想】いじめがどうして発生するかという「論理」や「定義」にはまったく関心を示さず、ただただ目の前で起こっている「いじめ」の現実を直視し、実践的・戦術的に解決へ向かう道筋を示す。淡々とした記述から、現場で関わってきた専門家としての凄味と覚悟を感じる。
我々も、ややもすると「論理や定義」を弄びがちになるわけだが、まずは生々しい現実を直視することから始めなければいけない。

【追記】諏訪哲二『いじめ論の大罪』に本書に関するコメントが載っていたが、私の感想とかなり似ていた。「ハウツーについてはおおむね妥当」(231頁)とか、「日本の臨床心理学の、地道な成果」(232頁)とか、「実践と理屈はあまり関係がない」(232頁)というあたりだ。まあ同じような感想を持ちつつ、私は「論理や定義」を云々することから引いたのに対し、諏訪は「理屈」に突っ込んでいったわけだが。

山脇由貴子『教室の悪魔―見えない「いじめ」を解決するために』ポプラ社、2006年