栄養科 4/23
目次
前回のおさらい
・教育基本法の概要:教育の目的は「人格の完成」です。知識を外からたくさん付け加えることではありません。
・西洋古代の教育:ソクラテスの思想。外部から知識をつけ加えるのではなく、自分の内部から本物の知を出産する手助け。
・西洋近世の教育:コメニウスの思想。印刷術が発明された結果、リテラシー(文字を読んだり書いたりする能力)がとても重要になりました。
今回の目標
・日本でもリテラシーが重要になった経緯を理解しよう!
・昔の日本の教育機関のことを知ろう!
・寺子屋と藩校の違いを理解しよう!
昔の日本の教育
・ほとんどの人は学校に行っていませんでした。生活をする上で、リテラシーはまったく必要ありませんでした。
・ごくごく一部の人が学校に行って勉強していましたが、それはリテラシーを必要とする専門家(書記・宗教)になるためでした。
書記の教育(儒教)
・律令制の整備とともに、書記の教育が始まります。書記は文字が読めないと務まりません。
*大学寮(中央の公立官僚育成機関)・国学(地方の公立役人育成機関)
*大学別曹(私立の書記育成機関):藤原氏の勧学院など
仏教の教育
・お坊さんは文字が読めないと務まりません。
*空海(774-835):綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)。828-845年。
*最澄(766/767-822):比叡山延暦寺。山家学生式(さんげがくしょうしき)。818年。
武士の教育
・武士の地位を上げるためには教養が必要です。
*金沢文庫:北条実時。1275年?
*足利学校:上杉憲実が再興。1432年。
日本での教育の始まり
※江戸時代の基礎知識:人間が平等ではなく、主に「サムライ/それ以外」で違いがありました。教育も、サムライの教育とそれ以外の教育で、かなり異なります。
寺子屋
*寺子屋:一般庶民が自分たちのために必要とした教育機関です。幕府や藩など支配者層が上から押しつけたのではなく、下からの自発的な要求によって自然発生的に増加していきました。
・庶民の生活と要求に対応して、手習い(習字)を中心として、そろばんや裁縫を教えていました。
※「往来物」と呼ばれるテキストを使っていました。
・江戸時代中期(西暦1750年頃)あたりから子供に対する意識が変わり始めます。
←生産力の向上、遺産相続への関心、家意識の形成
←商品経済の展開、識字能力の有効性の拡大
リテラシーの展開
・リテラシーと学校:学校に行って勉強する目的の一つは、リテラシーを獲得することです。
・「話し言葉」は意図的にトレーニングしなくても身につけることができますが、「書き言葉」は意図的・計画的にトレーニングすることで初めて身につけることができます。
・かつてリテラシーを持っていたのはごく一握りの知的エリートだけで、大半の人々は文字の読み書きができませんでした。
・最初は一部の意欲のある人々だけが学校に行ってリテラシーを獲得していましたが、リテラシーの有用性が広く認識されてくると、次第に全ての人が強制的にリテラシーを持たされるような制度に変わっていきます。
*コンピュータ・リテラシー:コンピュータを使って情報を獲得したり発信したりすることができる能力を意味します。現在はコンピュータ・リテラシーを持っていることが当たり前とされ、学校で習得するようになっています。この能力がないと就職活動すらできません。
江戸時代の文化
長期間にわたる平和と繁栄によって、学問が独自に発達を遂げていました。
*儒学:中国発祥の学問ですが、徳川家が推奨したのをきっかけとして、江戸時代の日本で独特の発展を遂げます。昌平坂学問所や藩校などで教えられていました。基本的には支配者階級のための学問で、主に武士が学んでいました。
・昌平坂学問所:林羅山の私塾(1630年)を起源として、1790年に正式に幕府の直轄学校となりました。1871年に閉鎖された後、現在では建物が湯島聖堂として残っています。
・藩校:全国に260あった藩が、それぞれ作っていた教育機関です。水戸藩の弘道館、長州藩の明倫館、薩摩藩の造士館、会津藩の日新館が有名です。
・郷校:例外的に武士ではない人々も学ぶことができた教育機関です。岡山藩の閑谷学校が有名です。
・私塾:学問サークルが発展して、個性的な塾が運営されていました。広瀬淡窓の咸宜園や、伊藤仁斎の古義堂、吉田松陰の松下村塾などが有名です。
*蘭学:日本は外国との交流を避けていましたが、長崎などを通じて入ってくる海外情報を元に、ヨーロッパの学問が研究されていました。シーボルトの鳴滝塾や、緒方洪庵の適塾が有名です。
*国学:中国とは異なる日本独自の文化を特に尊重して研究する姿勢が生まれていました。私塾としては本居宣長の鈴屋が有名です。
復習
・日本にあった学校について、創設者や成立年代など、自分なりに整理しておこう。
▼小テスト
予習
・「ジョン・ロック」や「ジャン・ジャック・ルソー」について調べておこう。