【要約と感想】キケロー『友情について』

【要約】友情は、お金や権力や名誉などよりも遙かに素晴らしいものです。なぜならお金や権力や名誉等は別の何かの役に立つことで初めて意味を持つものですが、友情はそれだけで意味のあるものだからです。
しかし徳と愛に基づいた友情でなければ、結ぶ意味はありません。利益や打算に基づいた友情は、必ず破綻します。友達だからといって、なんでも相手の要求を聞けばいいというものではありません。くだらない人間とは友情を結ばないようにしましょう。

【感想】実践的に言えば、「ともだち100人できるかな?」なんて言っている人に読ませるべき本ではある。100人も必要ないことが、よくわかる。

学術的には、アリストテレスの友情論(友愛=フィリア)との比較が課題になるようだ。細かい点で相違があるのは確かだが、友情の本質が「非功利性」にあると見ている点では、相通じるものがある。

とはいえ、『キケロー書簡集』を読むと、本人の言っていることとやっていることがまったく連動しておらず、本書の内容が所詮は綺麗事の言葉に過ぎないことが伺える。残念なことだ。

キケロー『友情について』中務哲郎訳、岩波文庫、2004年