教育学Ⅱ-10

■新松戸キャンパス 11/30(金)
■龍ケ崎キャンパス 12/3(月)

前回のおさらい

・ゆとり教育のデメリット。

ゆとり教育の修正

・2003年、学習指導要領の一部改訂:書いていないことも発展的な内容として教えてよいことになります。(ゆとり教育の終わりの始まり)
・2008年、学習指導要領改訂:授業時間増、指導内容の充実。→詰め込み教育の復活と単純に考えていいのでしょうか?

学力の再定義:学校教育法改定(2007年)

・2007年に学校教育法が改定され、第30条に「学力」が定義されます。

前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

・教育の主な関心が、コンテンツ(内容・知識)からコンピテンシー(能力)やソフトスキル(関心・意欲・態度)へと転換しました。89年改訂で登場した「新学力観」が法律化されたものとも言えます。
*コンピテンシー(competency):単に知識として知っているだけではなく、様々な情報を実際に活用して成果を出すことができる能力。「社会人力」とか「生きる力」とか「女子力」のような、「○○力」という言葉の流行とも関連します。
*ソフトスキル:テストなどで数値化することができないものの、成功する上で実は決定的な能力。「非認知能力」などとも重なる概念です。

PISAショック

*PISA:学習到達度調査。Programme for International Student Assessment。高校1年生対象。
*OECD:経済協力開発機構。Organisation for Economic Co-operation and Development
*PISAショック:2003年と2006年の調査で日本の順位が大幅に下がったことに教育関係者一同衝撃を受けたこと。←しかし2009年と2012年の調査では順位が上昇します。
・「活用力=コンピテンシー」と「学ぶ意欲=ソフトスキル」が日本の課題であることが明確になります。
*全国学力・学習状況調査:2007年より毎年実施。小6と中3を対象。←A問題とB問題の違いに注意しましょう。

これからやってくる世の中

知識基盤社会

*知識基盤社会(knowledge-based society):新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増すような世の中を意味します。

我が国が科学技術創造立国の実現に向けて世界をリードし、成長し続けるためには、イノベーションを絶え間なく創造できる人材の育成が求められている。「知」を巡る国際競争の激化や知識基盤社会の進展等により、産業構造の変化も急速に進んでいる現代においては、多種多様な個々人が力を最大限発揮でき、それらが結集されるチーム力が必要とされている。(知識基盤社会が求める人材像、2009年)

第4次産業革命

第4次産業革命とは、18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第3次産業革命に続く、次のようないくつかのコアとなる技術革新を指す。
一つ目はIoT及びビッグデータである。工場の機械の稼働状況から、交通、気象、個人の健康状況まで様々な情報がデータ化され、それらをネットワークでつなげてまとめ、これを解析・利用することで、新たな付加価値が生まれている。
二つ目はAIである。人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素を全て与えなくとも、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことが可能となっている。加えて、従来のロボット技術も、更に複雑な作業が可能となっているほか、3Dプリンターの発展により、省スペースで複雑な工作物の製造も可能となっている。
→内閣府「第4次産業革命のインパクト」2016年

(1)大量生産・画一的サービス提供から個々にカスタマイズされた生産・サービスの提供
(2)既に存在している資源・資産の効率的な活用
(3)AIやロボットによる、従来人間によって行われていた労働の補助・代替

Society5.0、データ駆動型社会

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。
これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して様々な制約があり、十分に対応することが困難でした。
Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。
→内閣府「Society5.0とは」2018年

復習

・PISAショックによって教育が変わったことを押さえておこう。
・これからやってくる不透明な世界について認識しておこう。

予習

・先行き不透明な世界で必要となる資質・能力について調べておこう。