【紹介と感想】石嶋洋平『子どもの才能を引き出す最高の学びプログラミング教育』

【紹介】保護者向けに、プログラミング教育の意義と、具体的な始め方、民間スクール選びなどを解説した本です。プログラミング教育が、単に職業教育として期待されているだけではなく、メタ認知能力やソフトスキルなど人格形成にも効果的であることが、様々な視点から分かりやすく示されています。
本書は、プログラミング教育で身につく普遍的能力を7つ挙げています。
(1)目的意識:目標から逆算して考える力が付く。
(2)論理的思考力:筋道を立てて考える力が付く。
(3)数学的思考力:数字・図・式に置き換えて物事を理解する力が付く。
(4)問題解決力:問題点を洗い出す力とリカバリーする力が身につく。
(5)クリエイティブ力:頭の中のアイデアを具現化できるようになる。
(6)実行力:自分から積極的に行動するようになる。
(7)文章読解力:人工知能にも負けない読解力が付く。
ということですが、私個人の経験から言っても、確かにそう思えます。

まあ、保護者にとっては分かりやすい本ですが、これから学校にプログラミング教育をどうやって組み込むのが参考にしたい教師にとっては、かゆいところには手が届いていないように感じるでしょう。学校関係者は、まず文部科学省のサイトを覗いた方がいいかもしれません。本書はあくまでも保護者目線で書いてあります。

【感想】プログラミング教育が、プログラマー育成を目的としているのではなく、普遍的な能力を育てるものであることが、かなり分かりやすく説かれている。本書では「7つの才能」をまとめているけれども、個人的にはさらに「仲間と協力して一つの目標に向かうためのコミュニケーション力」と「ルールを自分で設定する力」は、プログラミング教育で伸びる力として極めて有力であるように思う。
なにはともあれ、現場がプログラミング教育を「コンテンツからコンピテンシーへの転換」という文脈で捉えなければ逆効果になるだけだろうという思いを、ますます強くした。コンピテンシーの文脈で「活用力」を伸ばす「ツール」であると捉えれば、きっと現場に恩恵をもたらすだろうけれども、そうでなければ単に負担が増えるだけに終わる。まあ、結局は現場の先生たちの力に全てがかかってくるわけで、改めて教員養成課程の使命が重いことを自覚せざるを得ないのだった。

で、本書では、執筆者が関わるプログラミング私塾の宣伝が目に付いて、それ自体はもちろん悪いわけではないけれども、公教育という観点からすれば、食い足りない感じが残るのも仕方がない。個人的には、「学校は学校でしかできない凄いことがある!」と反論したくなるところではある。

石嶋洋平著・安藤昇監修『子どもの才能を引き出す最高の学びプログラミング教育』あさ出版、2018年