闘士ゴーディアンの、ここが革新的だ!

闘士ゴーディアンというと、一般的には山本正之の主題歌で知られているような風潮があるが、その神髄が理解されていないのは極めて残念なことだ。ということで、闘士ゴーディアンのどこが凄いか、切々と語らせていただく。

死亡フラグが立つまでもない

闘士ゴーディアンの最大の特徴は、「出死に」だ。お笑いには「出落ち」という概念がある。登場した瞬間に笑いをとることを意味する言葉だ。ゴーディアンには、「出死に」という概念がふさわしい。キャラが登場した瞬間に、視聴者が「あ、このキャラ、この回で死ぬな」と悟るからだ。もはや死亡フラグを立てるまでもない。
以下、どれだけ出死にするか、見てやっていただきたい。

ゲストキャラは、ほぼ死ぬ

ゴーディアンでは、ゲストキャラ皆殺しが繰り返される。
第7話で主人公の生まれ故郷が全滅したのを皮切りに、第11話では友情を交わしたヘンリー含めて第7連隊が全滅、第12話ではメガコン隊員ダルフの家族(母、姉、妹×2、弟)が皆殺しにされ、第16話では任務のために雇われた5人のゲストキャラが全滅、第33話では収容所から脱走した仲間が全滅する。
特に衝撃なのが第33話で、脱走した仲間がロイド将軍を救うために「ここは俺たちが引き受けた。ありったけの武器をおいてってくれ」と100%死亡フラグを立てて頑張ったにもかかわらず、ダイゴに背負われたロイド将軍は基地に着く前に死んでしまう。ふつう、ロイド将軍は助かるだろ。ダイゴは「俺は何をやってきたんだ。みんな死んじまった!みんな死んじまった!みんな死んじまった!」と叫び、マドクターに怒りの鉄拳をふるうのだった。

出死にDATA
■第7話の死亡者:ゲスト全滅。ゲンじいさん(祖父)、サム、幼馴染み
■第11話の死亡者:ゲスト全滅。ヘンリー。カスター隊長。
■第12話の死亡者:ダルフの家族みなごろし。(母、姉、妹×2、弟)
■第16話の死亡者:ゲスト5人全滅。 死亡フラグ:マーチン「俺に任せて早く行きな」
■第33話の死亡者:ゲスト全滅。ロイド将軍、ニッキー、マイルズ、ディランなど。

肉親が、ほぼ殺される

ゴーディアンでは、主要キャラの肉親がよく殺される。計算したところ、主要キャラの肉親は、83%の確率で、登場したその回のうちに死ぬ。
インパクトがあったのはポールの父親が公開処刑される第34話だ。ダイゴはポールの親父さんを助けに行くが、間一髪間に合わず、親父さんは蜂の巣にされるのだった。 ふつう間に合うだろ。
ヒロインの母親が無惨に殺される第58話もすさまじい。

出死にDATA:肉親の死亡者
■第7話の死亡者:ダイゴの祖父
■第12話の死亡者:ダルフの家族(母、姉、妹×2、弟)
■第34話の死亡者:ポールの父親
■第42話の死亡者:ダイゴの母親
■第58話の死亡者:ヒロインの母親

市長は、ほぼ死ぬ

ゴーディアンでは、市長が死ぬ。計算したところ、市長として登場したキャラは、85%の確率で、その回のうちに死ぬ。
20話代でビクトールタウン攻防戦が描かれた後、本格的なサントーレ同盟とマドクターの戦いが全地球規模で始まる。主人公達は他の街を味方につけようと会議を開いたりするが、簡単には味方は増えない。サントーレとマドクターの勢力拡大競争の過程で各タウンの市長が登場するが、ほとんどは惨殺されるか、自業自得の非業の死を遂げ、街は廃墟となる。
各市長が頻繁に登場するのは、このアニメではゴーディアンは切り札であっても決戦兵器ではないことに由来する。ゴーディアン一体では戦局を決着させることができないので、主人公側は各都市を味方につけるために政治をすることになり、その過程で各都市の市長の登場機会が増えるという仕組みになっているのだった。高度に政治的なアニメなのだ。

出死にDATA:市長の死亡者
■第24話の死亡者:ビクトールタウン知事ロビンソン
■第31話の死亡者:ビーサウンドタウン知事(街全滅)
■第39話の死亡者:マイナータウン市長(街全滅)
■第42話の死亡者:ケープギャラクシータウン市長マダムクイーン(街全滅)
■第44話の死亡者:タイガータウン市長(街全滅)、レインボータウン市長
■第47話の死亡者:スタータウン市長クーパー、ジョージタウン市長ジョージ
■第53話の死亡者:ヨーロッパ共同体タウン大統領シュバイツ

「ここは俺に任せてお前は早く行け」と言った奴は死ぬ

ゴーディアンでは、「ここは俺に任せてお前は早く行け」と言ったら、かなりの高確率で死ぬ。計算したところ、89%の確率で死ぬ。死ななかったのはバリー隊長くらいのものだ。
衝撃的なのは第26話のメイスン。バリー隊長を逃がすために戦ったメイスンは、マドクターのロボットに踏みつぶされて死ぬ。踏みつぶされる過程がきちんと丁寧に描かれるのが非情だ。

「ここは俺が食い止める」死亡者DATA
■第7話の死亡者:ゲンじいさん「わしにかまうな。早く街を救ってくれ」
■第16話の死亡者:マーチン「俺に任せて早く行きな」
■第26話の死亡者:フランコ「ここは我々が引き受けた。おまえは撤退しろ」、メイスン「15連隊にかまわず、その間に逃げろ!」
■第42話の死亡者:マダムクイーン「この戦いは私に任せてあなたがたは海岸に避難なさい」
■第59話の死亡者:龍馬「おいはここでできるだけ長く敵を食い止める」
■第60話の死亡者:ガウス「ここは我が隊に任せろ。早く家族たちをサントーレへ」

回心して味方になった人は、間違いなく死ぬ

ゴーディアンでは、回心して味方になったキャラが、容赦なく死ぬ。計算したところ、回心した7人のキャラ全員が死んでいる。死亡率100%。圧倒的だ。
第22話で登場した青シャツ党党首の妹アニタが、最終回一話前まで引っ張られた上で物質崩壊ビームによって木っ端微塵になるのも衝撃ではあるが、最も印象に残るのは第27話のマドクター戦闘員のエピソードだ。サントーレの避難民に詰め寄られ、「いいんだ。俺はみんなに殺されても仕方のない人間だ。今ならジタバタせず死ねるよう!ただ先生に何も恩返しができねえのが」と涙ながらに叫ぶところに、ゴーディアンのエッセンスが凝縮されている。第62話のあっけないテウスの死に様も、感慨深い。

回心したのに死亡者DATA
■第22話の死亡者:青シャツ党首ゲバリスタ
■第27話の死亡者:マドクター戦闘員
■第60話の死亡者:ガウス、メウス
■第62話の死亡者:カレン、テウス
■第72話の死亡者:アニタ(ゲバリスタの妹)

捕虜が虐殺される

ゴーディアンでは捕虜が助からない。
第37話では、マドクター幹部のエリアスが、部下のツアラを殺された腹いせに、300人の捕虜を大量虐殺する。300人はマドクター幹部一同が逃げるための人質だったのだが、ゴーディアンが手出しできずに幹部が逃げ切ったあと、虐殺される。ラストは砂漠に死体が転がっている図で終了する。ダイゴが「貴様ら人間じゃねえ、人間の皮をかぶった獣だ。ゆるさねえ、許してたまるか!」と叫ぶのも当然だ。
第58話では、せっかく解放したマドクターの負傷投降兵が、マドクター将軍の手によって皆殺しにされる。そもそもマドクターの下級兵士を巻き添えにする作戦で、「余分な人間は整理しておくのだー」「生きていても役に立たない者ばかり」というマドクター将軍のセリフが恐ろしい。
ちなみに第34話では、公開処刑にされた捕虜のうち、ポールの父親だけ蜂の巣にされ、他の人は助かる。とても珍しい。良かったね。

捕虜の虐殺DATA
■第33話の死亡者:脱走者多数
■第37話の死亡者:捕虜300人くらい皆殺し
■第58話の死亡者:マドクター負傷投降兵皆殺し

敵幹部は、ほっといても死ぬ

ゴーディアンでは、マドクター幹部を主人公がまともに倒せず、マドクターの内部抗争による陰謀で死ぬことが多い。最終回でクリントを殺されたダイゴは「許せねえ、お前らだけは俺がこの手で倒す」と叫ぶのだが、ダイゴが戦うまでもなくマドクター幹部たちは次々と自滅していった。ゴーディアンは、敵をこの手で倒してないのだった。戦闘隊長のバルバダスは、ゴーディアンが全く別のところで戦っているときに、メカコン隊員の待ち伏せで情けなく倒されているし。
バラス総統はいちおうゴーディアンとの一騎打ちで死んでいるが、構造的にはエリアスとの権力闘争に敗れたために一騎打ちに追い込まれた形となっている。
「お慈悲をー」と叫びつつ死ぬサクシダーなど、哀れすぎる。

マドクター幹部死亡者DATA
■第9話の死亡者:クロリアス(内部抗争による自滅)
■第27話の死亡者:バルバダス(主人公の仲間が爆殺)
■第63話の死亡者:バラス総統(内部抗争による自滅)
■第73話の死亡者:エリアス(自滅)、サクシダー(マドクター内部事情)、ドクマ大帝統(自滅)

どうしてこうなった

ということで、軽快な山本正之の主題歌などのせいで、一見脳天気なマカロニウェスタンに見えるにも関わらず、実際の内容は強烈な鬱展開だ。
ゴーディアンの放映期間は1979年10月~1981年2月。ちなみに『機動戦士ガンダム』の放映期間が1979年4月~1980年1月で、微妙にかぶっている。ゴーディアンの鬱展開は、基本的にはタツノコの『テッカマン』や『キャシャーン』に由来するのだろうが、中盤以降の戦争描写には『ガンダム』の影響を考慮する必要があるような気がする。
世界観は中二的SF世界。彗星衝突による文明崩壊後の世界というのはともかく、敵組織がナポレオンやヒトラーを陰から操っていたとか、ネアンデルタール人とクロマニヨン人の断絶を説明してしまうとか、挙げ句の果てに宇宙論で最終回を迎えるあたりなど、壮絶な超展開には唖然とせざるを得ない。