教育概論Ⅰ(中高)-12

栄養・環教 7/20
語学・心カ・教福・服美・表現 7/21

前回のおさらい

・教育権の構造。教職の専門性=教師に必要とされる資質・能力とは何でしょうか?
・現実に学校が果たしている役割=選抜。

隠れたカリキュラム

・学校の勉強で本当に身についているものは何でしょうか? あるいは、学校で身につけるべきだと子どもたちに期待されているものは何でしょうか?

カリキュラム:教育目的を達成するために、計画的に配列された、教育内容のことです。
・正式のカリキュラム:学校や教師が教えていると公式に表明されている教育内容です。学生や保護者や世間にとって、学生が学校で身につけることを期待している学習内容です。この学習内容をしっかり身につけた人ほど、高い能力があると考えられています。
・正式のカリキュラムは、完璧に身についているわけではありません。が、まったく人生で困らないのは何故でしょうか?

隠れたカリキュラム:教師は教えていると思っていないし、保護者や世間も学校でそれを教えているとは思っていないにもかかわらず、いつのまにか学生たちが身につけている暗黙の内容のことです。
・たとえば、勉強はつまらないし人生で役に立たない。→役に立たないものでもガマンして努力しなければならない。→つまらないし役に立たないものをガマンして身につける習慣がつきます。
・学校で時間を過ごすうちに、知識や考え方、行動様式が、意図されないまま、いつのまにか身についています。役に立つ労働者になる上では、このような習慣形成の方が、正式なカリキュラムで学ぶ知識よりも決定的に重要かもしれません。
・たとえば。遅刻しない、早退しない、無断欠席しない、授業中は席を立たない、先生の命令には無条件に従う、無意味に思えることでもとりあえずやる、相互監視する、競争する、出る杭を打つ、密告する。
・学校で身につける意識と行動様式は、すなわち、労働者として必要な意識と行動様式となります。
・隠れたカリキュラムとして、他に性別役割分業に関する意識等があると考えられています。

文化的再生産

・学歴の高い親の子どもの学歴も高くなりやすいのはなぜでしょうか?
・遺伝=生物的再生産でしょうか、環境=文化的再生産でしょうか?
文化資本:これを持っている人ほど高い権力や社会的地位が与えられるような、文化的な教養です。学校で教えられる正式な内容として採用されやすいものです。もともと支配的な文化(メインカルチャー)に馴染んでいた子供は高い学歴を得て高い地位へと再生産され、支配的でない文化(サブカルチャー)に馴染んでいた子供は低い学歴を得て低い地位へと再生産されやすくなります。
・文化資本は、労働者にとってはつまらないし役に立たないように見えます。しかし文化資本を独占する人々にとっては極めて優れた意味があるように見えます。→音楽や美術に対する興味・関心を比べてみよう。あるいは文化資本が高い家庭と低い家庭では、見るテレビ番組にどういう違いがでるか、考えてみよう。
・文化資本が高ければ高いほど学校文化に親和的な人間になり、そういう人間ほど高い学歴になる傾向があります。
・が、それは必ずしも人間としての能力が高いことを意味しないかもしれません。
→しかし、いったん文化資本を独占した人々(つまり学校文化に親和的な人々)が大きな力を持ったとき、その権力を他の人間に渡さない理屈として、学歴主義は十分に機能します。支配的な地位にある人々の子供は知らず知らずのうちに支配的な地位につき、支配される人々の子供は知らず知らずのうちに支配される地位につきやすくなります。

新教育

・20世紀初頭から世界的に広まった教育運動のことです。様々な人が活躍しますが、ほぼ共通して、主知主義的な教育を批判し、子供の自発性や能動性、創造性を重視します。日本では大正期(1912年~1926年)に流行し、大正新教育運動と呼ばれます。

人間の範囲の拡大

・「白人+男性+キリスト教徒+中産階級」のみを人間とした市民社会から、様々な人々の努力により、徐々に人間(人格を持ち、自由と権利を行使できる者)の範囲が拡大していきます。たとえば、労働者、女性、異教徒(無神論者)、子供、障害者。→動物?
・具体的な権利の拡大過程として、男子普通選挙権(労働者への公民権拡大)。女性参政権、フェミニズム(女権拡大論)。植民地の独立。公民権運動。
児童の権利に関する宣言(1959年)。児童の権利条約(1989年)。児童を、保護の対象から、権利の主体へと捉え直します。
障害者権利条約(2006年)→障害者基本法改正、障害者差別解消法(2013年)へと繋がっていきます。

児童中心主義

児童中心主義:子供を「客体」として扱うのではなく、子供が「主体」となります。「教育する=教師や学校が主語」のではなく「学習する=子供が主語」へと転換します。

ジョン・デューイ John Dewey

・アメリカ出身。1859年~1952年。
・著書:『学校と社会』『民主主義と教育』
・キーワード:コペルニクス的転回。実験学校。問題解決学習。
・名言:「なすことによって学ぶ。」

エレン・ケイ Ellen Karolina Sofia Key

・スウェーデン出身。女性。1849年~1926年。
・著書:『児童の世紀』
・名言:「教育の最大の秘訣は、教育しないことにある。」←ルソーの消極教育の影響が指摘されています。

モンテッソーリ Maria Montessori

・イタリア出身。女性。1870年~1952年。
・著書:『幼児の秘密』『子どもの発見』
・キーワード:子供の家。感覚教育法。教具。自発性。整えられた環境。