流通経済大学「教育学Ⅰ」(10)

■新松戸キャンパス 7/6(金)
■龍ケ崎キャンパス 7/2(月)

【補講のお知らせ】
■新松戸キャンパス=7/18(水)6限 302教室
■龍ケ崎キャンパス=7/11(水)5限

前回のおさらい

・イニシエーション、若者組。

人格の完成

・「近代」になって、現在の教育が始まる。身分制を乗り越え、すべての人が「人間」になるために同じ教育を受ける。自分がなりたい自分になるための教育。
・現在の日本の教育でも、教育基本法第一条に、教育の目的は「人格の完成」だと書いてある。教育とは、偏差値を上げるためにするものでもないし、知識をたくさん得るためにやるものでもない。
人格とは何か? 目に見えないし、触ることができないし、科学的に存在を確かめることができない。
・「好き」と「愛してる」という言葉の意味の違いをヒントに考えてみる。

 好き愛してる
個性代わりがある代わりがない
タイプ言える言えない
数値化表せる表せない
アイデンティティ変わる変わらない
様相主観的な感情存在のあり方
対象モノ(純粋理性)人格(実践理性)

・人格とは、比較できず、束ねられず、代わりがなく、変わらないようなもの。
・モノと人格は決定的に違います≒好きと愛してるの違い。
・「人格を尊重する」とは、どういうことか。→モノとして扱わないこと。

個性

・個性=Individualityの翻訳語。
・「個」性と見るか、個「性」と見るかで、意味が異なってくる。もともとは「個」性で、長所とか特徴とか持ち味などという言葉とはニュアンスが異なる。
・他のものと交換することができない、かけがえのない、なにか。それが取り去られたら、私が私でなくなってしまう、なにかのこと。それは究極的には「自由」とか「意志」とか「自律」という概念に関わってくる。
・「個性を尊重する」とはどういうことか?
・教育者が言ってはならない、個性を否定するような言葉に気をつける。
・一人一人の個性を大事にするとはどういうことか?

【児童の権利条約第7条-1】
「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」
*児童の権利条約:1989年に国連総会で採択し、日本は1994年に批准しました。

アイデンティティ

・日本語では「自我同一性」や「存在証明」などと訳される。「あの私」と「この私」が一致していることを証明したいときなどに用いられる。「IDカード」=Identity card。
・自同律(principle of Identity):「A=A」「わたし は わたし」
・この世に変化しないものなどあるのか? 「A→A’」
・私は常に変化し続けている(新陳代謝)にも関わらず、どうして常に「わたしはわたし」と言うことができるのか?
・わたしの属性について考えてみよう。A=X、A=Y、A=Z・・・・。常に一致しているのは何か? 主語と述語の関係に注目してみる。
・常に主語であるものにはアイデンティティが成立している。
・述語に重点を置くか、主語に重点を置くかで、同じ文章でも世界の見え方や関わり方が異なってくる。
・「主体性」や「自主性」とは何か?

復習

・「個性」や「アイデンティティ」という言葉について考えを深めよう。

予習

・「自由」や「自己実現」という言葉について調べておこう。

発展的な学習の参考

稲垣良典『人格《ペルソナ》の哲学』
「人格」という概念をどのように理解するべきかをキリスト教神学の立場から根本的に考察した本で、歴史的考察としても哲学的思索の参考としてもたいへん読み応えがある。

大澤真幸『恋愛の不可能性について』
好きであることの理由を具体的にいくつ積み重ねていっても、その人だけを好きであることは絶対に証明できないということが、分析哲学の立場から明らかにされている。

プラトン『パイドロス』
プラトン哲学のなかで、恋愛について最も深く語っている著作。恋愛というものが人間の言葉で合理的に説明できるものではなく、存在の深淵に関わることが明らかにされている。