教職基礎論(栄養)-8

▼短大栄養科 6/16

前回のおさらい

・「義務教育」と「普通教育」の意味。
・義務教育として行う普通教育の内容は「学校教育法」に規定されています。
・「学力」も「学校教育法」に定義されています。学力には3つの要素があります。
・学習指導要領の構成。生きる力と知識基盤社会。

学習指導(つづき)

OECDの主要能力(キーコンピテンシー)

OECDOrganisation for Economic Co-operation and Development=経済協力開発機構。
PISA:Programme for International Student Assessment=学習到達度評価。
キーコンピテンシー:OECDが2000年から開始したPISA調査の概念的な枠組みとして定義付けられました。
・単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な課題に対応することができる力のことです。
(1)社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する力
(2)多様な社会グループにおける人間関係形成能力
(3)自立的に行動する能力

→従来の「学力」とは異なる新しい学力として、「キーコンピテンシー」のほかに、「21世紀型スキル」とか「ソフトスキル」(これまでのハードスキル=目に見える知識・技術ではない、姿勢とか態度などの人格特性)とか「社会人基礎力」とか「学士力」というような言葉が続々と登場しています。すべてに共通するのは、これまでの学校のやり方では、もうこの先やっていけないという認識です。「新学力観」を打ち出した、いわゆる「ゆとり教育」も、この流れの中で登場しました。

(いわゆる)ゆとり教育

ゆとり教育:いわゆる「詰め込み教育」からの転換です。(文部科学省による正式名称ではありません)。いつから「ゆとり教育」が始まったかや、実質的な定義、評価等については、立場によって見解が大きく分かれているものの、1990年代後半から2000年代前半にかけてがピークだったことについてはおおむね一致します。
新学力観:従来の「知識・技能」を中心とした学力観を脱却して、思考力や問題解決能力、一人一人の個性を重視しようとする新しい「学力」に対する考え方です。1998年の学習指導要領から示されました。
学力低下:1990年代から2000年代にかけて、子供たちの学力が低下したのではないかという問題関心を示す言葉です。実際に学力が低下したかどうかは吟味の必要があります。また、現実的には学力格差の拡大のほうが問題の根が深いかもしれません。
PISAショック:2003年と2006年のPISA調査結果で、日本の子供たちの学力が国際的な水準から見て急激に低下したことに、多くの人々が驚愕したという事態です。いわゆるゆとり教育を見直すきっかけとなりました。
全国学力・学習状況調査:2007年より開始された、日本全国の小中学校生徒全員を対象としたテストです。あくまでも学習指導要領の実施状況を確認することが目的です。

教育における競争の原理

・「個性を伸ばす」といっても、どのようなメカニズムで個性を伸ばすのでしょうか?
・「格差が拡大する」といっても、どのようなメカニズムで格差が拡大するのでしょうか? 格差が拡大するのは、そもそも悪いことでしょうか?

学区制:教育委員会によって、児童生徒が通う公立学校が一つ指定される制度です。
学校選択制:児童生徒が通う学校を保護者が選ぶことができる制度です。選ぶことができる範囲は自治体ごとに異なります。
教育バウチャー制度:私立学校も選択肢に入れることによって、さらに競争を促進します。
学校民営化論:民間会社に学校運営を任せることで、教育を自由競争の原理にゆだねます。
構造改革特別区域:法律等の規制によって自由な運営が不可能であった事業を、特別に可能にする地域を設けます。たとえばカリキュラムの自由化、学校運営主体の弾力化、小中一貫教育の推進等が進められます。

・「規制緩和」「構造改革」「自由化」「民営化」=自由競争を促進することによって全体の水準を上げていく狙いです。
・しかし一方で、自由の罠。強者が弱者を食い物にすることで、ますます格差が拡大する懸念があります。
→「個性の尊重」と言っても、指し示す具体的な内容が立場によってまったく異なります。具体的にどのようなことを指して言っているのか注意して検討する必要があります。

復習

・これまでの学校教育とは違う、あたらしい「学力」の中身と、それを育てるためのシステムについて押さえておこう。
・「ゆとり教育」という言葉を正確に押さえよう。

予習

・「教科書」や「評価」について調べておこう。