【福島県いわき市】勿来の関は、本当にそこにあったのか?

 勿来関は「なこそのせき」と発音します。

 勿来駅前には源義家の像が鎮座しています。義家が勿来の関の歌を詠んだことで、歌枕としての地位を確立したということです。

 駅から南に1.5kmほどで、勿来の関に着きます。勿来の関にも源義家の像が建っています。

 石畳も整備されており、関所っぽい雰囲気が漂っています。

 案内石盤によれば、古代に設置された奥羽三大関の一つということになっています。

 が、実は歴史学的には、本当に福島県にあったのかどうかも怪しいし、そもそも存在自体すら疑われております。文学以外の行政文書で、関所の存在が確認できないのです。

 現在の歌枕の地位も、江戸時代になってから磐城平藩が観光名所として整備したせいで確立したのではないかと思われます。仙台藩が歌枕として末の松山と沖の石を整備したのも想起されます。

 まあ、なかったと思われていたものがいきなり発見される例もあるので、100%なかったとは言い切れないわけですけれども。

 近くには勿来関文学歴史館という学習施設も建っています。勿来の関にゆかりのある和歌などが紹介されています。昭和的アナログの展示ではなく、かなりお金のかかった立体的でマルチメディアな展示になっており、気合いを感じます。勿来の関がここにあったかどうかが確かではないことも、しっかり説明されております。
 が、想像をふくらませて様々な和歌が詠まれたことは歴史的な事実であり、みちのく情緒が想像される歌枕としての「勿来の関」の価値が下がるということはありません。ガチンコに歴史がどうこうと野暮なことを言うのではなく、風雅に想像を羽ばたかせる「歌枕=ファンタジーの係留地」として愉しむべき場所と言えましょう。
(2014年7/31訪問)