教育学Ⅱ(新松戸)-12

▼新松戸キャンパス 12/15

前回のおさらい

・1977年と1989年の学習指導要領改訂。ゆとり教育の開始。個性の尊重。
・オイルショックと産業構造の転換。
・臨時教育審議会。民営化、自由化、規制緩和、構造改革。
・学校選択制。バウチャー制度。

学習指導要領の変遷(2)つづき

聖域なき構造改革

*高校多様化:1990年代~。中高一貫校。総合学科。単位制高等学校。
*小泉純一郎:構造改革特区(2002年)。

・学習指導要領によらない多様なカリキュラム編成(構造改革特区研究開発学校制度)。
・株式会社による学校設置の容認。
・不登校児童生徒等の教育を行うNPO法人で一定の実績等を有するものの学校設置の容認。
・大学設置基準の緩和(校地面積,運動場設置,空地確保の弾力化)。
・教員の特別免許状の授与権者として特区市町村教育委員会も追加。
・インターネットを利用した教育を行う大学・大学院についての各種施設基準の弾力化。
・「公私協力学校」の設置。
・学校施設の管理及び整備に関する権限を教育委員会から地方公共団体の長への移譲。

→小学校1年生から英語の授業を実施。
→小中一貫、9年間を4・3・2に区切って教育課程を実施。
→「市民科」や「情報科」を新設。
→小中高12年一貫教育で、授業を全部英語で行う。(構造改革特区第1号)

1998年の学習指導要領改訂

・「生きる力」の育成。教育内容の厳選、「総合的な学習の時間」の新設。
・いわゆる「ゆとり教育」。学校週五日制=1995年から月2回。2002年から完全実施。
学校週5日制のめざすものは…

学校週5日制は、学校、家庭、地域社会の役割を明確にし、それぞれが協力して豊かな社会体験や自然体験などの様々な活動の機会を子どもたちに提供し、自ら学び自ら考える力や豊かな人間性などの「生きる力」をはぐくむことをねらいとしています。
子どもたちの「生きる力」をはぐくむためには、豊かな体験が不可欠です。自然体験などが豊富な子どもほど、道徳観や正義感が身についているという調査結果も出ています。

・授業時間削減=公的部門の割合を減らし、市場に委ねる割合を増やす。

自由化、民営化、規制緩和、構造改革のデメリット

(1)本当に「個性」の育成につながるのか? 単に「序列化」が進行し格差が拡大するだけではないか?
(2)本当に質が向上するのか? 競争に際して不正を行う者が多いとどうなるか。
(3)教育は「サービス」なのか?

学力格差の拡大

・いわゆる「学力低下」の実態。
・授業時間削減:教育の市場化による格差拡大。十分な教育資金で子供を塾にやれる家庭と、アルバイトをしてしまう子供がいる家庭との格差。
・学校選択制:文化資本の差による格差拡大。十分な教育情報を集める文化資本(金・時間・情報・人脈)がある家庭とない家庭の格差。
*春学期に扱った「自由のワナ」。

競争の底抜け

・賞味期限詐欺、耐震偽造詐欺←規制緩和によって未熟なプレイヤーが競争に参加する。
・競争の質。真っ当に努力した者が報われているのか?
・たとえば2011年の大津市いじめ問題。大津市には学校選択制が導入されていたが、いじめは隠蔽された。理屈通りなら学校選択制によっていじめがなくなってもいいのに、現実にそうならなかったのはなぜか?

教育とサービス消費

・他のサービスと異なり、教育サービスは購入時点ではまだ「未完成品」である。
・他のサービスと異なり、教育サービスは購入者自身を対象とする。
・教育は本質的に「サービスの消費」ではなく、生徒との共同的な「価値の生産」の過程である。
・学生に人気のある先生は、本当に良い先生か?

復習

・「ゆとり教育」という見かけの教育問題の下で、本当に進行していた自由化・民営化・規制緩和・構造改革について把握しよう。
・メリットとデメリットについて押さえよう。

予習

・2017年の学習指導要領改訂について調べよう。