【要約と感想】林竹二著作集7『授業の成立』

【要約】ソクラテスの問答法をベースにして、実際に小中学校で授業をやってみたところ、子供たちは活き活きとした表情で授業に参加しました。子供たちが授業に集中していたことは、感想からも伺うことができます。
一方、学校の先生たちがやっている授業は、子供たちを殺すような授業です。彼らは本物の授業というものをまったく理解していません。子供の発言が多ければ多いほどいい授業になると、根本的に勘違いしています。それは迷信です。子供の発言が少なくとも、子供たちが授業に入り込んで自分の問題として捉えることができれば、それはいい授業になります。
成績のいい子供を中心とした授業は、本当に勉強したいと思っている子供たちを振り落とし、子供たちを殺していきます。一人一人の子供をかけがえのない存在として認めるところから始めなければなりません。

【感想】授業中の子供たちの写真が、なによりも雄弁。批判者が言葉でなんと言おうと、子供たちの表情が説得力の源となっている。林竹二の授業は、きっと教室の中に浄化の空気を作っている。
ひるがえって、現場の教師たちに対する林の言葉は極めて厳しい。子供たちを殺しているのは教師であり、教師は加害者であると、糾弾して止まない。確かにそういう林の言葉に一理はあるが、反面、一理でしかないとも思う。きっと教師には教師の言い分がある。しかしその言い分は「子供のため」という言葉の前では、掻き消されざるをえない。
林の投げかけた問題は、現代でも間違いなく有効だ。ますます重要になっているとも言える。真剣に「教材研究」を行えば、確かに授業は良くなるだろう。アクティブ・ラーニングの掛け声が盛んな昨今、子供の発言が多い授業が必ずしも良い授業とは限らないという洞察も、個人的にはとてもありがたい。しかし、一人の教師にできることには、限界があるのも、また確かだと思う。

林竹二著作集7『授業の成立』筑摩書房、1983年