教育概論Ⅱ(中高)-2

▼語学・心カ・教福・服美・表現 9/23
▼栄養・環教 9/26

前回のおさらい

・近代から現代への変化に応じて教育の形も変わらざるをえない。

ナショナリズム

*ナショナリズム:国家の構成員が「私は○○人である」という自覚を持っている状態。
・どうして私たちは、日本が勝つと(たとえばスポーツやノーベル賞など)嬉しくなるのか。会ったこともなければ話したこともない赤の他人が受賞したとしても、なぜ誇りに思えるのか。→「同じ日本人だから」という理由以外にはない。
・しかし、同じ血液型や同じ身長や同じ足のサイズの人が受賞したとしても、特に嬉しいとは思わない。「同じ日本人」と「同じ血液型」との違いは何か?

前近代:封建国家の自己認識(日本)

・たとえば江戸時代、日本人の多くは「私は日本人である」という自覚を持っていなかったし、持つ必要はなかった。
←身分制社会では、自己認識は身分に依拠していた。たとえば「私は侍である」とか「私は農民である」など。そうでなければ、身分制を基礎とした社会秩序が保てない。「侍と農民で身分が違おうが、同じ日本人ではないか」とはならないし、なってはいけない。
←あるいは幕藩体制においては、自己認識は主従関係に依拠し、日本という単位は視野に入ってこなかった。たとえば「私は赤穂藩士である」とか「私の殿様は吉良だ」など。主従関係が強固に結ばれることによって、社会秩序が保たれた。「主人が異なっていようが、同じ日本人ではないか」とはならないし、なってはいけない。
・このように、前近代=封建国家においては、身分地域によって自己認識が分裂していた。
・逆に言えば、身分制が廃止され、地域間格差がなくならないと、「同じ○○人である」と思える条件ができない。
・国家の構成員が「私は日本人である」という自覚を強烈に持つ条件が整うのは、身分制が廃止(四民平等)され、中央集権国家(廃藩置県)ができる近代以降。
・明治維新によって日本に誕生したのが、国民国家(nation-state)

前近代の自己認識(ヨーロッパ)

・中世は、国家というよりも、国「家」。家が拡大したものとしての国。
←百年戦争(1337年~1453年)の推移。現代の国家間同士での戦争とはかなり様相が異なっている。
・ブルボン家やハプスブルグ家。日本の大名家。封建制。領邦君主。「家政学(Oikonomicos)」とは、もともとこのような「国-家」を運営するための学。もともと「家政」を行っていたのは「家長=男性」。
・絶対王政(貴族の没落によって王権に主権が一極集中する)を経て封建制が崩れ、市民革命(国民に主権が集中する)に伴って国民国家が完成する。典型例としてのフランス革命。

国民国家と教育

*「国家」を英語に翻訳すると?
(1)country:国土。田舎。ふるさと。
(2)state:一定の領土を有し政治的に組織され主権を有するもの。法律的・理念的な意味での統一体としての国家。
(3)nation:共通の文化言語などを有する国民が作る国家。

国民国家

・stateとnationは一致するのか? 韓国、スイス、中国、韓国等の例を考える。
→韓国:state=2、nation=1
→スイス:state=22、nation=4
→中国:state=1、nation=56
・日本はどうか?
国民国家:nation(国家の文化的側面)とstate(国家の政治的側面)が一致している状態。
民族自決:一つのnation(民族)はそれぞれ一つのstate(政治的に組織された主権)を持つべきという考え。
・nationとstateを一致させるには、どうしたらよいか? たとえば1つのstateの中に3つのnationがあったら→(1)3つのnationそれぞれに対応する新しいstateを作る=分離独立、(2)3つのnationを1つのnationに統合してstateに合わせる=国民統合
・どうやって?←教育で。

 

復習

・封建国家と国民国家の違いを押さえておこう。それを踏まえて、具体的に江戸時代と明治時代の違いを説明できるようにしよう。
・nationとstateの違いについて押さえておこう。

予習

・国歌の働きについて考えよう。