【要約と感想】林竹二『授業-人間について』

【要約】人間とは何か?をテーマにした授業を小学生にやってみたら、素晴らしい効果が上がりました。教育とは知識を教えこむものではなく、子供たち一人一人の可能性を引き出すものであることが、実践を通して改めて明らかになりました。

【感想】ソクラテスの対話法を実際に授業に適用したらどうなるか、という実践的興味を実行に移してみた、実践記録。本書には、実践記録:子どもたちの感想:理論的背景が配されており、実践の意味が重層的に理解できる。少々、自画自賛我田引水の印象もなくはないけれども、理論と実践が一体となった意欲的な試みが実際に遂行されたことの意義はとても大きい。いま文部科学省は「考え、議論する道徳」とか言っているけれども、すでに40年以上前にこういった実践があったことは思い返されてよい。逆に、先人が積み重ねてきた知見を無視しながら「考え、議論する道徳」とか言ってみても、うまくいくわけがないだろう。

林竹二『授業-人間について』国土社、1973年