教員免許更新講習2017

人格の完成

・教育基本法第一条
「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」

・道徳の特別の教科に係る一部改正:『小学校学習指導要領解説 総則編』p.8
人格の完成及び国民の育成の基盤となるのが道徳性であり、その道徳性を養うことが道徳教育の使命である。」

・道徳教育の目標:『小学校学習指導要領解説 総則編』p.28
「道徳性は、人間としての本来的な在り方やよりよい生き方を目指して行われる道徳的行為を可能にする人格的特性であり、人格の基盤をなすものである。」

・生徒指導の充実:『小学校学習指導要領解説 総則編』p.98
「生徒指導は、学校の教育目標を達成するために重要な機能の一つであり、一人一人の児童の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら,社会的資質や行動力を高めるように指導、援助するものである。すなわち、生徒指導は、全ての児童のそれぞれの人格のよりよき発達を目指すとともに、学校生活が全ての児童にとって有意義で興味深く、充実したものになるようにすることを目指すものであり、単なる児童の問題行動への対応という消極的な面だけにとどまるものではない。」

・生徒指導の意義と原理『生徒指導提要』p.10
「人間の成長・発達というのは、個としての欲求の充足や人格の完成という側面が、社会への適応や社会の中での成功という側面と不可分の形で営まれていくものと言えます。そのいずれか一方のみで成り立つものではなく、いずれか一方のみが強調され過ぎた場合には他方が大きな支障をきたすといった関係にあるとすら言えるでしょう。」
「教育という営みなしに、児童生徒自らが人格を完成させていくことはありません。だからと言って、大人が児童生徒の人格を完成させてあげられる、というわけでもありません。」
「児童生徒が、自らの欲求を大切にしつつ、社会との調和を図りながら、自らの人格の完成を自ら求め、自己実現を図っていけるような資質や能力をはぐくんでいくことが、教育に課せられた大きな課題なのです。」

「人格」とはどういうものか?

・人格=personalityの翻訳語。明治25年(1892年)頃からヘルバルト主義の流行に伴って普及。拙論参照
・目に見えない、触ることができない、科学的に存在を確かめることができない。
・「好き」と「愛してる」という言葉の意味の違いを通して、「人格」について考えてみる。

 好き愛してる
個性代わりがある代わりがない
タイプ言える言えない
数値化表せる表せない
アイデンティティ変わる変わらない
様相主観的な感情存在のあり方
対象モノ(純粋理性)人格(実践理性)

・人格とは、比較できず、束ねられず、代わりがなく、変わらないようなもの。
・モノと人格の違い≒好きと愛してるの違い。
・「人格を尊重する」とは、どういうことか? →モノとして扱わない。

個性

・個性=Individualityの翻訳語。日本では明治25年(1892年)頃からヘルバルト主義の流行に伴って普及。拙論参照
・「個」性と見るか、個「性」と見るかで、意味が異なってくる。もともとは「個」性。長所とか特徴とか持ち味などという言葉とは意味が違う。拙論参照
・他のものと交換することができない、かけがえのない、なにか。それが取り去られたら、私が私でなくなってしまう、なにか。
・「個性を尊重する」とはどういうことか?
・教育者が言ってはならない、個性を否定するような言葉。
・一人一人の個性を大事にするとは?

・児童の権利条約第7条-1
「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」

アイデンティティ

・日本語では「自我同一性」や「存在証明」などと訳されることがある。「あの私」と「この私」が一致していることを証明したいときなどに用いられる。「IDカード」=Identity card。
・自同律(principle of Identity):「A=A」「わたし は わたし」
・この世に変化しないものなどあるのか? 「A→A’」
・私は常に変化し続けている(新陳代謝)にも関わらず、どうして常に「わたしはわたし」と言うことができるのか?
・わたしの属性について考えてみる。A=X、A=Y、A=Z・・・・。常に一致しているのは何か? 主語と述語の関係に注目してみる。
・常に主語であるものにはアイデンティティが成立している。主語が常に同一→自己同一性。
・述語に重点を置くか、主語に重点を置くかの違い。同じ文章でも世界の見え方や関わり方が異なる。
・「主体性」や「自主性」とは何か?

自由と責任

・「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」とは何か?
・モノは自由ではないが、人格は自由である。
・教育とは、自由でないようなものを、自由にするための営みである。
・子供は不自由で、大人が自由? →子供は生理現象に無条件に従わざるを得ないが、大人は同じ生理現象に対しても様々な選択肢を持っている。
・モノは外部の物理法則に従わなければならないが、人間は自分(たち)で作ったルールに従うことができる。「自律」=自分で自分をルールに従わせる。

・「自立心や自律性は、児童がよりよい生き方を目指し、人格を形成していく上で核となるものであり、自己の生き方や人間関係を広げ、社会に参画をしていく上でも基盤となる重要な要素である。」『小学校学習指導要領解説 総則編』p.138
・「互いの人格を尊重し、個性の伸長とともに、社会的資質や行動力を高める上では、先述したように、自発的、自治的な活動を中心とした学級活動の充実が重要である。」『小学校学習指導要領解説 特別活動編』p.143

自己実現

・どのように人格は完成へと向かうのか。
・自己実現≒ほんとうのわたしデビュー、わたしらしいわたし。社会的な成功とは基本的にはあまり関係がない。
・直線的な発達ではなく、ジグザグな成長。矛盾と葛藤。
・弁証法的発展。自己耽溺(自己中心主義)と自己疎外(世間中心主義)の葛藤から、自由で主体的な決断を経て、責任を引き受けて、自己実現へ。
・「自分こわし」と「自分つくり」の連続。

「児童が、自己の存在感を実感しながら、よりよい人間関係を形成し、有意義で充実した学校生活を送る中で、現在及び将来における自己実現を図っていくことができるよう、児童理解を深め、学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図ること。」
『小学校学習指導要領』総則、p.9
「(3)自主的、実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして、集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに、自己の生き方についての考えを深め、自己実現を図ろうとする態度を養う。」『小学校学習指導要領』特別活動の目標、p.164