【要約と感想】斎藤忍随『プラトン』岩波新書

【要約】ソクラテス=プラトンの思想の根底にあるのは、アポロンの神話やデルポイ神殿に色濃く見られる「死の思想」です。人間は必ず死ぬという事実に直面したとき、プラトンの思想の本当の意味が見えてきます。

【感想】60頁くらいまで、プラトンやソクラテスの話題にならない。なかなか主人公が出てこないということで、どこの『ダンガードA』かと。

まあ、主人公たちが出てこないのは、一方で社会史的な背景をしっかり記述してあるということではある。ギリシアにおけるアポロン神の位置づけ、デルフォイ神殿の意味など、やたら勉強になった。そういう意味では、ある程度ソクラテスやプラトンについて知っている中級者向けの本と言える。イデア論に関してもさらっと触れられるだけではあるが、著者の立場が濃密に込められているようには読めた。

斎藤忍随『プラトン』岩波新書、1972年