【要約と感想】藤沢令夫『プラトンの哲学』

【要約】プラトン思想の核心は徹底的にイデア論である。

【感想】イデア論に関して、個人的には「広義のイデア論」と「狭義のイデア論」があって、後期プラトンで放棄されたのは狭義のイデア論の方だって見えていたわけだけど。まあ大雑把には、そんな見え方で問題ないことは確認できた。が、具体的な論理展開に関しては、ずいぶん勉強になった。

本書は、認識を成立させるために不可欠な根拠としてイデア論が要請される、と考える。経験の総和としては不可能な「先験的な総合判断」というものが成り立つためには、どうしても論理的にイデアという概念が要求されねばならない。そしてこのイデアは、「存在」の体系などではなく、「価値」と「意味」の体系として経験的な知覚を成立させる基盤となる。そしてこの体系に説得力を持たせるためには、認識論から「主語となる個物」を消去する手続きが必要となる。

もう、なるほどなあと。これならイデア論が、確固とした認識論を伴いながら成立する。後期で放棄されたのは、「分有」という述語を伴った狭義のイデア論ということになる。そして、イデア論は現象学と相性がいいという印象がさらに強まった。とても勉強になった。

藤沢令夫『プラトンの哲学』岩波新書、1998年