教育概論Ⅰ(保育)-9

▼短大保育科 6/15(木)

前回のおさらい

・アイデンティティ。自主性や主体性。
・自由と責任。みんなで作ったルールは、みんなで守る。自由は単なる自分勝手やワガママとはまったく違う。

人格の完成(つづき)

理性

・法則を発見する手続き=科学。
・科学的思考とは何か。「分析/総合」。「演繹/帰納」。

分析:ひとつのものをいくつかの要素に分けて、本質的な要素を析出する。
総合:析出された本質的な要素をつなぎ合わせて観念を構成する。
観察:個別具体的なもののうち、似ているところや異なっているところを把握する。
感覚:客観的な対象を主観的な印象として取り込むための窓口。

演繹:抽象的な理論から個別具体的なものや現象を説明する。
帰納:個別具体的なものから抽象的な理論を発見する。
推論:具体的なものを改めて観察するまでもなく、頭の中だけで論理的に考えて結論を導き出す力。

・幼児教育において、自然とふれあうことが極めて重要となる。理性=科学的思考法を身につける基礎(人格形成の基盤)は、幼児教育にある。

自己実現

・どのように人格は完成へと向かうのか。
自己実現≒ほんとうのわたしデビュー、わたしらしいわたし。社会的な成功とは基本的にはあまり関係がない。
・直線的な発達ではなく、ジグザグな成長。矛盾と葛藤。
・弁証法的発展。自己耽溺(自分勝手)と自己疎外(適応過剰)の葛藤から、自由で主体的な決断を経て、責任を引き受けて、自己実現へ。
・「自分こわし」と「自分つくり」。

「近代教育」まとめ:人格の完成とは・・

・個性の尊重:独立。かけがえのないわたし。
・アイデンティティの確立:主体。まさにこのわたし。
・自由の獲得:責任。わたしが作ったルールに従うわたし。
・理性:科学。ほんものを見つけるわたし。
・自己実現:夢。ほんとうのわたし。
→「近代的自我」

近代の教育思想

・特定の職業や身分のための人間形成を超えるような、普遍的な人間を作ることを目指す教育思想は、近代から始まる。

コメニウス Johannes Amos Comenius

・宗教改革、プロテスタント。
・1592年~1670年。モラヴィア出身。
・主著『大教授学』、『世界図絵』(世界初の絵本)
・教育学的愛称:近代教授学の父
・キャッチフレーズ:全ての人に全ての事柄を教授する

ロック John Locke

・市民革命、経験主義。
・1632年~1704年。イングランド出身。
・主著『市民政府論』(政治思想)、『人間悟性論』(認識論)、『教育論』あるいは『教育に関する一考察』(教育思想:翻訳が異なるだけ)
・キャッチフレーズ:紳士教育タブラ・ラサ(白紙説)
・名言:健全なる精神は健全なる身体に宿る
・新しい市民社会を担う紳士(ジェントルマン)を作る。子供期の独自性を認めるというより、理性ある大人になるための教育。習慣形成の重要性。

ルソー Jean-Jacques Rousseau

・市民革命、ロマン主義。
・1712年~1778年。ジュネーヴ出身。
・主著『社会契約論』(政治思想)、『人間不平等起源論』(政治思想)、『エミール』(教育思想)
・キャッチフレーズ:子どもの発見消極教育
・名言:万物を創る者の手を離れるときはすべてよいものであるが、人間の手に移るとすべてが悪くなる
・子供期の独自性を初めて主張する。消極教育とは、書物による早期教育をいましめ、まず自然による教育(たとえば感覚の訓練など)を重視する姿勢。

近代教育思想の特徴

・完成した大人の理想像から教育を組み立てる考え(ロック的なもの)と、純粋な子供の理想像から教育を組み立てる考え(ルソー的なもの)の両側面。子供の誕生=大人の誕生。
・いずれにせよ、あらゆる人間が共通して持つ「理性」に対する全面的な信頼。
・個人を育てる私教育。集団の軽視。

復習

・近代の教育思想家の主張について、単に暗記するのではなく、時代背景を思い浮かべながら、それぞれの考えを味わってみよう。

予習

・ペスタロッチーやヘルバルト、フレーベルという人物について調べよう。