教育概論Ⅰ(栄養)-8

▼短大栄養科 6/6

前回のおさらい

・近代の教育思想:ペスタロッチー、ヘルバルト、フレーベル。
*ドラえもん構造で考えてみよう。
→リテラシー:自分のための教育
→民主主義:新しい時代に相応しい人間を作る教育。

義務教育の思想

・「義務教育」とは、誰の誰に対するどのような義務か?
・「子供が教育を受ける権利」はどこから生まれたか?
・「自由権としての教育」だけでは問題が発生する。

思考実験:自由の落とし穴

・自由を拡大したとき、得をするのはどういう人たちか?
・強者と弱者の間の格差拡大。
・自由を<実質的に>使いこなすことができるのは金持ちだけ。貧乏人はそもそも自由に<実質的に>手が届かない。形式的に自由を与えるだけでは、意味がないかもしれない。
・「自由権としての教育」だけでは、金持ちは十分な教育を受けることができたとしても、貧乏人は教育を受けることができない。教育によって、ますます貧富の格差が広がる。
・独立自営農民の解体。資本家と労働者への階層分化。

労働力の売買

・「働く」とは、経済学的にはどういうことか?
*労働力:「働く」と言うのではなく、「労働力を売る」と言う。「雇う」と言うのではなく、「労働力を買う」と言う。
・労働力の再生産は、家庭で行われる。
・労働力をモノのように売買できるようにしたことで、市場原理によって必要なところに迅速に労働力が供給され、資本主義の展開が加速する。(奴隷労働のままでは労働力の流動化が促進されず、資本主義は加速しない。)

思考実験:働いたら負け

・働いていない人ほどお金儲けができる?
・ワーキングプア:働けば働くほど貧乏になる?
・労働力は、売るよりも買う方が得?
・労働力を買うには、生産手段(土地や工場)がなければならない。
・生産手段+原材料+労働力→商品
・モノの価格は市場原理(競争)によって決まる→労働力の価格も市場原理(競争)によって決まる。
・失業者問題。
・努力すればするほど悪循環に陥るのはなぜか。←競争する相手を間違えている。
・最も安いのは、子供の労働力。→児童労働の発生。
・児童労働を防ぐにはどうしたらよいか???←誰もが自由で平等だったからこそ児童労働が発生してしまったのであって、もはや形式的な自由権では対処不可能。

社会権としての教育

*社会権:形式的に自由が与えられるだけでなく、全ての人が実質的に自由を使いこなすことができるように、強者に対してハンデを設け、弱者に対して様々なアドバンテージが与えられる。生存権、労働基本権、教育を受ける権利。
・たとえば、最低賃金や労働時間の設定、労働組合の結成等により、成人の労働環境が守られ、児童労働の自然発生を抑制することができる。
・児童労働の撤廃に向けての具体的な動き。
・誰が責任を持つのか?←「国家」の積極的な関与。

コンドルセ marquis de Condorcet

・1743年~1794年、フランス出身。
・愛称:公教育の父
(1)子供の学習権。
(2)教育費無償。
(3)ライシテ:政治的中立や宗教的中立。

ロバート・オーエン Robert Owen

・1771年~1858年、イギリス出身。
・キーワード:性格形成学院
・工場法の展開

1802年徒弟の健康と道徳に関する法律制定。
1819年繊維工場では9歳以下の労働禁止。16歳以下は1日12時間以内に制限。
1833年12時間労働。9歳未満の労働禁止。13歳未満は週48時間。
1844年女性労働者の労働時間制限。
1847年若年労働者の労働時間を1日10時間に制限。
1870年教育法制定。公費による学校設立。

復習

・自由が拡大すると格差も拡大する理屈について押さえておこう。
・「社会権」の意義について押さえておこう。
・「義務教育」が成立する過程について、理論と実践の両面から押さえておこう。

予習

・労働と教育の関係について考えてみよう。