【要約と感想】斉藤研一『子どもの中世史』

【要約】昔の子供は、今よりも過酷な環境に置かれていました。

【感想】「昔の子供はこうだった」などと安易かつ軽率に発言してしまう人たちがいるけれども。実際のところ、昔の子供がどういう生活を送っていたのか、総体的かつ包括的に理解して言及している人はほとんどいない。大半が自分の狭い経験と独断的な思い込みを最大限に理想化して垂れ流しているに過ぎない。

かくして、現実の子供問題を適切に判断するためにも、昔の子供が実際にどういう生活を送っていたのか、知識と教養として理解しておく必要がある。歴史的な深みを知ることで、さらに広い視野から現実問題を捉えることができるようになる。本書は個別的なテーマを掘り下げることで、中世の子供たちの現実の様相に様々な角度から光を当てている。

出産の時のおまじない、子供の安全を祈願する習俗、御守りなど、子供の健やかな成長と発達を願う事例に加えて、子供の人身売買、捨て子、子供の連続誘拐殺人事件の多発、子供の地獄など、昔の子供が過酷な状況に置かれていたことも明らかになる。事実を知るにつけ、「昔の子供は…」などとは、もはや安易には言えなくなっていく。

このような歴史学の成果を現実にどう活かしていくかは、教育学の仕事になる。がんばりましょう。

斉藤研一『子どもの中世史 (歴史文化セレクション)』吉川弘文館、2012年<2002年