「matsudo2018z」タグアーカイブ

流通経済大学「教育学Ⅰ」(3)

■新松戸キャンパス 4/27(金)
■龍ケ崎キャンパス 4/30(月)

前回のおさらい

・自営業/資本家/労働者それぞれの働き方について。
・「専門教育/普通教育」の違いについて。

隠れたカリキュラム

学校の勉強で本当に身についているものは何だろうか? あるいは、学校で身につけるべきだと子どもたちに期待されているものは何だろうか?

*カリキュラム:教育目的を達成するために、計画的に配列された、教育内容。
・正式のカリキュラム:学校や教師が教えていると公式に表明されている教育内容。学生や保護者や世間にとって、学生が学校で身につけることを期待している学習内容。
・正式のカリキュラムは、完璧に身についているわけではない。が、まったく人生で困らないのは何故か?

*隠れたカリキュラム:教師は教えていると思っていないし、保護者や世間も学校でそれを教えているとは思っていないにもかかわらず、いつのまにか学生たちが身につけている暗黙の内容。
・勉強はつまらないし人生で役に立たない。→役に立たないものでもガマンして努力しなければならない。→つまらないし役に立たないものをガマンして身につける習慣。
・知識や考え方、行動様式が、意図されないまま、いつのまにか身についている。このような習慣形成の方が、正式なカリキュラムで学ぶ知識よりも、優秀な労働者になる上で決定的に重要。
・遅刻しない、早退しない、無断欠席しない、授業中は席を立たない、先生の命令には無条件に従う、無意味に思えることでもとりあえずやる、相互監視する、競争する、出る杭を打つ、密告する。
・学校で身につける意識と行動様式=労働者として必要な意識と行動様式。
・他に性別役割分業に関する意識等。

メリトクラシーと学歴主義

・分業によって生産性が格段に上がる。アダム・スミス。
・分業が促進されるほど、個性が意味を持つ。社会に人材を送り出すとき、それぞれの特性に応じた持ち場に就けることができれば、社会全体の効率が上がる。適材適所。
・この場合の「個性」とは実際に何を意味しているのか?
・人間を測るモノサシ。横の個性と、縦の個性。

メリトクラシー:能力主義。身分や血筋の高い者が社会を統治する体制を否定する。出自に関係なく個人の持っている能力によって地位が決まり、能力の高い個人が社会を統治する。
学歴主義:学校の勉強に高い適応能力を示した個人が、きっと社会一般でも高い能力を発揮するだろうと期待する態度。しかし、学校の勉強に高い適応能力を示す個人が、一般社会で高い適応能力を示すとは限らないということは、広く気がつかれている。それにも関わらず、どうして学歴主義が説得力を持つのか?→文化的再生産論

文化的再生産

・学歴の高い親の子どもの学歴も高くなりやすいのはなぜか?
・遺伝=生物的再生産か、環境=文化的再生産か?
文化資本:支配階級の習慣や考え方を教育システムが評価することにより、もともとそういう習慣を身につけていた層が高い学歴を得て、高い階級へと再生産される。
・労働者にとってはつまらないし役に立たないように見えるものも、文化資本を独占する人々にとっては極めて優れた意味があるように見える。学校文化に親和的な人間ほど高い学歴になる傾向があるが、それは必ずしも人間としての能力が高いことを意味しない。
→だが、いったん文化資本を独占した人々(つまり学校文化に親和的な人々)が大きな力を持ったとき、その権力を他の人間に渡さない理屈としては十分に機能する。

復習

・「隠れたカリキュラム」と「文化的再生産」という観点から、学校教育について改めて考え直してみよう。

予習

・資本主義のメカニズムについて考えておこう。

流通経済大学「教育学Ⅰ」(2)

■新松戸キャンパス 4/20(金)
■龍ケ崎キャンパス 4/23(月)

前回のおさらい

・ドラえもん構造。ジャイアン・スネ夫・のび太の人生で、学校の持つ意味はそれぞれ異なる。それは「自営業/資本家/労働者」という立場の違いによって生き方が異なり、学校に期待するものが異なるためである。

働いたら負け?

・ジャイアン・スネ夫・のび太、それぞれの生き方をもう少し詳しく見てみよう。「生き方」という言葉の具体的な中身を「お金の稼ぎ方」と読み替えて考え、さらに「お金を稼ぐために必要な知識と技術」という観点を深めてみよう。

「自営業」は具体的にどういう働き方をしているのか。

・誰かから給料をもらうのではなく、自分の腕で直接お金を稼ぐ。
・働く時間や場所を誰かから命令されることなく、自分で決めることができる。
・金物屋、八百屋、美容師、ラーメン屋、居酒屋、農家、漁師、お寺、アプリ制作、同人誌作家、インディーズの歌手、ユーチューバー等。(ただし企業に雇われて給料をもらいながら店長等をやっている場合は、自営業ではなく労働者。またフリーランスであっても、他人と契約を結んで金をもらう場合は自営業ではなく労働者。)
・自分の腕一本でお金を稼ぐためには、「確かな技術」が必要。しかしこの「確かな技術」は、小学校や中学校の勉強で身につけることができるものだろうか?
・「確かな技術」を身につけるためには、「普通教育」ではなく「専門教育」が必要。
*専門教育(高校専門科・専門学校・大学):希望する職業に役に立つ確かな知識や技術を身につけるための教育。
*普通教育(小学校・中学校・高校普通科):希望する職業に役に立つかどうか分からない知識を身につける教育。

「資本家」は具体的にどうやってお金を稼いでいるのか。

・誰かから給料をもらっているわけではなく、お金を出す立場。
・働く時間や場所が決まっていないどころではなく、働かなくてもお金が増える。
・飲食店のオーナー、コインランドリーのオーナー、アパートやマンションの経営、企業のオーナー、株主。
・自分が働くのではなく、お金を出すことでお金を増やすという仕組み。何にお金を出す(出資する)かで、お金の増え方が劇的に変わる。どの企業や業種が成長するかに対する「鋭い嗅覚」が必要。この嗅覚が鈍いと、単にお金を失って終わる。
・「鋭い嗅覚」は、小学校や中学校の勉強で身につけることができるものだろうか?
・そしてまた、「鋭い嗅覚」だけで成功できるものだろうか? 大量の元手=資本がない人は、そもそも出資することが不可能。
・最初から金持ちが圧倒的に有利。お金がない人は、頑張って貯金して元手を捻り出すしかない。

*起業家:自分はお金を持っていないから出資はできないが、資本家がお金を出したくなるような魅力的(カネの臭いがする)な計画を作って、お金を集める。
・起業する知識や技術は、小学校や中学校の勉強で身につけることができるものだろうか?

「労働者」は具体的にどうやってお金を稼いでいるのか?

・誰かから給料をもらって働く。
・働く場所や時間や内容を自分で決めることが難しい。他人から命令される。
・ただし、一般労働者=交換がききやすい/熟練労働者=交換がききにくい、の違いはある。
・お金を出すことができないから、自分が働くしかない。→「労働力」を売ると言う。高く売りつけるために、自分の「労働力」の価値を高めなければならない。
・「労働力」の価値を高めるために、学校は役に立つだろうか?
・学校の勉強が得意な人間は、「労働力」の価値も高いと思われている。逆に考えれば、「労働力」の価値を高めるために、学校という仕組みが必要とされているとも言える。
・学校とは、優秀な労働者を大量生産することが期待されている場所である。
*普通教育(小学校・中学校・高校普通科):どんな仕事にも対応できる労働力の価値を高める教育。→隠れたカリキュラム
*AIの発達:これまで必要だった労働者と、これから必要になる労働者が、まったく異なることが予想されている。

復習

・ジャイアン、スネ夫、のび太の生き方を踏まえて、学校が果たしている役割を確認しよう。

予習

・「隠れたカリキュラム」という言葉について調べておこう。
・資本主義の仕組みを調べよう。

流通経済大学「教育学Ⅰ」(1)

■新松戸キャンパス 4/13(金)
■龍ケ崎キャンパス 4/16(月)

単位について

・試験は行わず、レポートで成績を決定する。
・レポート提出期限は学期最後の授業時間内とする。(新松戸7/20、龍ケ崎7/16予定)
・レポートの形式および内容については、6月中に指示する。
・出席数が足りていない者については、レポート提出を認めない。
・レポートに関して、コピペが発見された場合は、カンニングと同じ扱いとする。

出席について

・出席確認は「出席調査システムC-learning」で行う。
・スマホを忘れた、電池が切れた、電波が届かない等の理由でC-learningが使用できなかった場合は、必ずその日のうちに申し出ること。いかなる理由があろうと後日の申し出は認めない。
・事由ある欠席の場合は、必ず公式な文書を作成して提出すること。
・公式文書の作成が認められない場合(就職活動等)による欠席も、やむを得ない理由がある場合は必ず書面で報告すること。
・遅刻は出席と認めない。
・出席に関して不正が確認された場合は、どれだけ出席していようと単位は認められない。

※新松戸5/11と6/22、龍ケ崎6/25は休講の可能性あり。(学会出席のため)
※ただし休講になったとしても、「補講」を行う可能性が高い。

予習復習について

・大学設置基準によれば、1回90分の授業につき3時間の予習復習が要求されている。
・本講義も、予習と復習を前提として構成される。本講義の内容が理解できないとしたら、予習と復習が足りていない可能性が高い。
・予習と復習の具体的な指示、参考文献等の提示については、このサイトで行う。

質問について

・非常勤講師なので、授業日以外には出校しない。
・質問がある場合は、時間がある限り授業後に対応する。
・込み入った質問の場合は、回答をこのサイトに掲載することで対応する。

「学校」の機能を考える

・まず「学校」が現実に果たしている機能を見えやすくするために、思考実験をしてみよう。

【思考実験】ジャイアン・スネ夫・のび太のうち、「学校」の成績を最も気にする必要があるのは誰か?

▼答え:のび太

▼理由:(1)ジャイアンの家は「自営業」であり、ジャイアンは跡継ぎである。学校のテストの点が良かろうと悪かろうと、ジャイアンの将来の職業は変わらない。
(自営業は、誰かから給料がもらえるわけではないので、自分自身の活動によって商品価値のある物や情報やサービスを生み出さなければならない。しかしその活動をうまく行うための具体的で実践的なスキルを「学校」で教えてもらえることはあまり期待できない。)

(2)スネ夫の家は「資本家」であり、自分自身が労働する必要はない。スネ夫は出来杉くんのような才能ある人材に投資するだけで儲かるのであって、自分自身が高学歴である必要はあまりない。スネ夫にとって「学校」とは、自分が投資するに値する有能な人間を生産してくれる場所である。スネ夫が出来杉くんにはラジコンを貸すのに、のび太には貸さない理由を考えよ。

(3)のび太の家は「労働者」であって、自分自身が労働する必要がある。生涯賃金を上げようと思ったら、良い企業に雇用される必要がある。そのためには良い大学を出なければならないし、そのためには良い高校を出なければならない。学校のテストの点は、のび太の人生に直接的に影響を持つ。
(ちなみに、自営業は自分の活動で生み出した物や情報やサービスを売ってお金を稼いでいるが、労働者が売っているものは何か?)

(4)オマケ:しずかちゃんの生き方には「専業主婦」という選択肢が色濃く反映されている。どうしていつもお風呂に入っているか、考えよ。

「家族」の教育戦略によって「学校」の見え方が異なる

・「家族」の性格によって、「学校」への期待のかけかたの重点が異なる。
・「労働者」のキャリアは、少なくとも就職先は学校でのテストの結果が大きく左右する。
・しかし「実家の商店の跡継ぎ」になるジャイアンにとって、「学校」の勉強にはどういう意味があるだろうか?
・「家族」が必要としている教育内容は、はたして「学校」が提供している教育内容で満足させられるだろうか?

次回までの準備

・自分が「のび太」なのか「ジャイアン」なのか「スネ夫」なのか、考えておくこと。
・どうしてそう考えたのか、判断の根拠や理由についてもまとめておくことが望ましい。