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教育学Ⅱ-9

■新松戸キャンパス 11/16(金)
■龍ケ崎キャンパス 11/26(月)

前回のおさらい

・1958年版学習指導要領:高度経済成長。
・1977年版学習指導要領:オイルショック。
・臨時教育審議会。民営化、規制緩和の論理。

学習指導要領の変遷(3)

1998年の学習指導要領改訂

・「生きる力」の育成。教育内容の厳選、「総合的な学習の時間」の新設。
・世間一般が言ういわゆる「ゆとり教育」は、この時期の教育を指します。学校週五日制=1995年から月2回。2002年から完全実施。
学校週5日制のめざすものは…

学校週5日制は、学校、家庭、地域社会の役割を明確にし、それぞれが協力して豊かな社会体験や自然体験などの様々な活動の機会を子どもたちに提供し、自ら学び自ら考える力や豊かな人間性などの「生きる力」をはぐくむことをねらいとしています。
子どもたちの「生きる力」をはぐくむためには、豊かな体験が不可欠です。自然体験などが豊富な子どもほど、道徳観や正義感が身についているという調査結果も出ています。

・授業時間削減=公的部門の割合を減らし、市場に委ねる割合を増やすことです。公的な学校の時間を削減した分、私的に自由に使える時間が増えました。
・ゆとり教育の本質とは、「公・官/私・民」の配分の問題です。

自由化、民営化、規制緩和、構造改革のデメリット

(1)本当に「個性」の育成につながるのでしょうか? 単に「序列化」が進行し格差が拡大するだけではないでしょうか?
(2)本当に質が向上するのでしょうか? 競争に際して不正を行う者が多いとどうなるでしょうか。
(3)教育は「サービス」なのでしょうか?

学力格差の拡大

・いわゆる「学力低下」の実態。
・授業時間削減:教育の市場化によって格差が拡大しました。十分な教育資金で子供を塾にやれる家庭と、アルバイトをしてしまう子供がいる家庭との格差が広がります。
・学校選択制:文化資本の差によって格差が拡大しました。十分な教育情報を集める文化資本(金・時間・情報・人脈)がある家庭とない家庭の格差が広がります。
*春学期に扱った「自由のワナ」を参照のこと。

競争の底抜け

・賞味期限詐欺、耐震偽造詐欺←規制緩和によって未熟なプレイヤーが競争に参加してしまったのが問題です。
・競争の質。真っ当に努力した者が報われているのでしょうか?
・たとえば2011年の大津市いじめ問題。大津市には学校選択制が導入されていましたが、いじめは隠蔽されてしまいました。理屈通りなら学校選択制によっていじめがなくなってもいいのに、現実にそうならなかったのはなぜでしょうか?

教育とサービス消費

・教育は本質的に「サービスの消費」ではなく、生徒との共同的な「価値の生産」の過程です。
・サービスとしての教育は、単に利己主義的な人間を育てる結果に終わらないでしょうか?
・学生に人気のある先生は、本当に良い先生でしょうか?

復習

・「ゆとり教育」という見かけの教育問題の下で、本当に進行していた自由化・民営化・規制緩和・構造改革について把握しよう。
・市場化のメリットとデメリットについて押さえよう。

予習

・2017年の学習指導要領改訂について調べよう。

教育学Ⅱ-8

■新松戸キャンパス 11/9(金)
■龍ケ崎キャンパス 11/12(月)

レポート課題

・締め切り:新松戸=1/18(金)、龍ケ崎1/21(月)。授業時間内に回収する。教務課や学務課には提出しないように。この日に来られないことがあらかじめ分かっている場合は、締め切り前に提出するよう工夫すること。
・形式:800字~2000字。手書き可。コンピュータ使用可。B5でもA4でも原稿用紙でもレポート用紙でも可。表紙無用。名前を忘れないように。
・内容:授業で扱ったトピックから興味・関心があるものを自分で選んで、分かったことや考えたこと、調べて深めたことなどを書く。2つ以上を組み合わせても良い。
・注意事項:剽窃が発覚した場合は、不可とする。

前回のおさらい

・学習指導要領1958年版:法的拘束力あり、道徳登場。
・逆コースと高度経済成長。

学習指導要領の変遷(2)

学習指導要領(1977年版)(1989年版)

・いわゆる「ゆとり教育」が開始されます。「個性」の尊重が合い言葉となります。
*「ゆとり教育」という言葉が意味するものについて、注意しましょう。見かけの教育現象ではなく、日本社会で本質的に進行していた事態に目を向けましょう。
・この時期(あるいは現在まで)の教育を理解するには、1984年の「臨時教育審議会」が決定的に重要です。

オイルショックと産業構造の転換

・1973年にオイルショックが起こり、高度経済成長が終わ、低成長時代に入ります。ただし日本だけ早期に復活します。Japan as No.1(1979年)からハイテク景気とバブル景気へ。
・重厚長大型産業(石油を莫大に使用する産業、少品種大量生産)から軽薄短小型産業(ロボットとコンピュータ、多品種少量生産)への転換に成功しました。
・生産主導から消費主導へ=マーケティングと宣伝広告の重要性。
・人材雇用の転換=アウトソーシング。終身雇用から流動的な雇用へ。
・知識観の転換=知識や技術の賞味期限の短縮。暗記型(知識の量)から検索活用型(思考力・判断力・表現力)へ。
・教育観の転換=「まじめ」から「個性」へ。
→1977年の学習指導要領改訂:「ゆとりある充実した学校生活の実現=学習負担の適正化」
→1989年の学習指導要領改訂:新学力観。個性。
・どうしたら「個性」を育てることができるのでしょうか?

臨時教育審議会

*中曽根康弘総理が1984年に総理府に設置し、教育改革ブームとなります。
・中央教育審議会(文部省)と臨時教育審議会(総理府)。内閣が直々に「教育改革」の前面に出てくるとはどういう事態なのでしょうか。
・キーワード=民営化、自由化、規制緩和、構造改革、小さな政府。
・電電公社→NTT(1985年)、専売公社→JT(1985年)、国鉄→JR(1987年)。
・自由化、民営化のメリット=公共部門の縮小による歳出削減。市場原理(競争原理)により、個性が伸張し、サービス全体の質が向上します。
・自由化、民営化のデメリット=後述します。

教育における市場原理

・学区制を廃止して学校選択制に転換しようとします。学校選択制の導入によって個性が伸張し、全体的にレベルアップします。
・たとえば、いじめはどうしたらなくなるでしょうか? 大学の授業がつまらないとしたら?
→バウチャー制度。私立学校も含めて競争原理に巻き込みます。
→学校民営化。すべてを競争原理に委ねます。

復習

・いわゆる「ゆとり教育」に関して、実際には臨時教育審議会(1984)による規制緩和と構造改革が進行していた事実を認識しておこう。

予習

・民営化のデメリットについて考えておこう。

教育学Ⅱ-7

■新松戸キャンパス 11/2(金)
■龍ケ崎キャンパス 11/19(月)

学習指導要領の変化

学習指導要領(1958・60年版)・(1968・69・70年版)

・法的拘束力ありとなりました。
・特設道徳が登場しました。
・家庭科/技術が男女別学となりました。
・学習内容が大幅に増加し、受験競争が激化しました。→詰め込み

逆コース

・中国(1949年)と朝鮮半島(1950年)の情勢が変化し、冷戦体制によって、GHQの方針が転回しました。
サンフランシスコ平和条約(1951年)。
池田ロバートソン会談(1953年)
・教育二法(1954年)。「教育公務員特例法の一部を改正する法律」と「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」。
・地方教育行政の組織及び運営に関する法律(1956年)。教育委員選出を公選制から首長による任命制に転換。
スプートニク・ショック:1957年、ソ連が人工衛星スプートニクの打ち上げに成功します。
*教育の現代化:ブルーナー『教育の過程』。発見学習。「どの教科でも、知的性格をそのままに保って、発達のどの段階の子供にも効果的に教えることができる。」→1968年の学習指導要領改訂に多大な影響を与えます。

高度経済成長

・1955年~1973年にかけて日本は圧倒的な経済成長を遂げます。1964年=東京オリンピック、1970年=大阪万博。
・日常生活が急激に変化しました。三種の神器(白黒テレビ、電気冷蔵庫、電気洗濯機)
・大卒初任給が急激に増えました。貧乏→豊か。
・産業構造が転換しました。農業→工業。3チャン農業。出稼ぎ。
・進学率が上昇しました(高校:50%→90%、大学:10%→30%)。半分しか高校進学できなかった時代から、ほとんど高校進学する時代へ変化します。
・親の権威の低下します(親が子供に教えてやれることは何もない)→教師の権威が増大します(高校進学・大学進学の実態について知っているのは教師だけ)。
・教育に関して親が頼れるのは学校と教師しかないという状況になり、学校と教育の黄金時代を迎えます(見かけ上)。
・実態は、「でもしか先生」でした。教師に「でも」なるか。教師に「しか」なれない。
・受験競争が激化し、詰め込み教育が横行します。
・親が子供にかける期待が増大します。マンガの事例。
・「ムラを育てる教育」から「ムラを捨てる教育」へと変わりました。

復習

・冷戦構造と高度経済成長によって教育が大きく変化する理屈を把握しておこう。

予習

・オイルショックと「臨時教育審議会」について調べておこう。

教育学Ⅱ-6

■新松戸キャンパス 10/26(金)
■龍ケ崎キャンパス 11/12(月)

前回のおさらい

・日本近代と戦争の関係。

ナショナリズムの力と問題

・身分制秩序を破壊して、国民を平等に向かわせる力を持っています。
・異質な集団を一つにまとめる力があり、戦争に強くなります。
・一方で、異質なものを排除しながら「純粋」さを追求していく傾向を強めます。
・排除したものを「敵」として固定し、憎しみを増幅させる作用があります。
・巨大な力と、コントロールの難しさを、併せ持っています。

教育基本法体制

・1947年法律第25号。日本国憲法と密接に関係。(2006年改訂)
・日本国憲法が国作りの「理念」を表現しているとすれば、教育基本法は具体化への「方法」を示していると言えます。
・「教育勅語」と正反対の理念が示されています。

教育勅語の失効

・1948年、衆議院と参議院での決議。何が問題だったのでしょうか?
・問題は「主権在君」と「神話的国体観」にありそうです。

主権在民と基本的人権

*主権在民:国民ひとりひとりが「主人公」であるという政治体制。人間は誰か別の存在のために使われる「脇役」ではありません。
*基本的人権:ひとりひとりが自分の人生の主人公となって生きることができるためには、これだけはどうしても必要になるという最低限の権利のことです。幸福権や職業選択の自由や財産の自由や身体の自由などなど。

学校教育法

・1947年法律第26号。いわゆる「6・3・3制」
・複線制(フォーク型)から単線制へ。
・女性の地位の変化。
・教員養成の変化。師範学校から開放制へ。

学習指導要領(1947年版)

・「学習指導要領(試案)」。「試案」とはどういうことでしょうか。
・法的拘束力がありませんでした。
・道徳科がありませんでした。
・社会科が新設されました。←「主人公」として生きるためには、基本的人権だけでは不十分で、ガイドブックも必要になります。
・家庭科が男女共修になりました。

生活綴方(せいかつつづりかた)

*無着成恭『山びこ学校』。1948年、山形県山元中学校。1951年、クラス文集を『山びこ学校』として刊行しました。
*綴方:いわゆる作文のこと。

復習

・教育基本法体制の仕組みについて押さえよう。

予習

・高度経済成長について調べておこう。

教育学Ⅱ-5

■新松戸キャンパス 10/19(金)
■龍ケ崎キャンパス 11/5(月)

前回のおさらい

・日本の祝祭日から、日本のナショナリズムの特徴が見えてきます。
・教育勅語は元田永孚(もとだながざね)と井上毅(いのうえこわし)が中心となって作成しました。

日本のナショナリズム(つづき)

教育勅語の構造

・第一パートを理解するためには、日本神話(とくに天孫降臨)に対する知識が不可欠です。
・第二パートの徳目は、「儒教」の伝統的徳目に近代主義を混ぜたものです。
・教育勅語を中心とした教育体制が構築されます。修身、国語、歴史、地理との関係。
・しかしそもそも、教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのでしょうか?

日本近代と戦争

・日本が外国とどれくらい戦争したか、考えてみよう。
・日本の歴史全体を考えたときに、近代の戦争の特徴について考えてみよう。

復習

・教育勅語の影響を押さえておこう。

予習

・教育基本法体制の仕組みについて調べておこう。