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【感想】サントリー美術館「遊びの流儀 遊楽図の系譜」

サントリー美術館で開催中の「遊びの流儀 遊楽図の系譜」展を見てきました。

「遊び」というと、近代以降では子どもの専売特許のような印象を持ちがちなのですが、かつては大人も子どもも一緒になって全力で遊ぶものでした。大人も一緒に遊ぶ様子がよく分かる展覧会だったように思います。

たとえば中世では、蹴鞠や貝合という遊びは貴族の嗜みでした。梁塵秘抄に記された「遊びをせんとや生れけん」とは、後白河法皇が愛した今様に由来します。中世以降は、中国の士大夫層の嗜みであった「琴棋書画」がアレンジされて、屏風や襖絵が描かれることになります。遊んでいるのは大半がいい大人です。近世初期に描かれた風俗図や遊楽図でも、全力で踊っているのは、大人です。子どもも描かれてはいますが、授乳されていたり、手を引かれていたりするのが目立つくらいで、遊びの主役であるようには見えません。囲碁や将棋や双六の盤は、豪華な蒔絵を施された嫁入り道具にもなっており、単なる子どもの遊び道具とは扱われていません。総合的に見て、「遊びは子どものもの」という意識を確認することはできません。

子どもと大人の遊びが明確に分裂し、「遊びは子どものもの」という意識が作られていくのは、近世中期以降のことでしょうかね。この時期に作られた児童用玩具が大量に発掘されているのを思い出します。
近世中期は、子どもに対する教育の意図が明確に目立ち始める時期でもあります。「子ども=遊ぶもの/大人=働くもの」の分離プロセスについて、想像力が喚起される展覧会でした。