「精神医学」タグアーカイブ

【要約と感想】下園壮太『人はどうして死にたがるのか』

【要約】人がウツになるのは、感情のメカニズムが誤作動を起こすからです。原始時代には合理的だった感情のメカニズムは、現代社会では必要のないときに作動して、ウツを引き起す原因となります。そして、混乱した自分の状態に絶望して未来への展望を失ったとき、人間の心のメカニズムが誤作動を起こして、死に向かいやすくなります。

【感想】科学的に正しいかどうかはともかく、実践的な考えとしては、ナルホドと思いながら読んだ。説明原理には進化心理学的な背景があるのだろうが、まあ、科学的に言えば仮説ではある。とはいえ、仮説だろうがなんだろうが、実践的に役に立てば問題ないわけだ。混乱している当人や周囲の人に「説明原理」を与えるものとしては、けっこういい本なのかもしれないと思った。文章も分かりやすい。

下園壮太『人はどうして死にたがるのか』サンマーク文庫、2007年

長岡利貞『自殺予防と学校―事例に学ぶ』

【要約】自殺予防に関して、日本は遅れています。マスコミも無責任です。「寝た子を起こす」ようなことは、ありません。本書は具体的な事例を通じて、自殺予防のあり方について考えます。
自殺の形は様々です。マスコミが言うような一般事例に解消することはできません。子どもの自殺を予測することは簡単ではありませんが、関係者一同が力を合わせていく必要があります。

【感想】パラグラフのまとめに自殺に関連した短歌が置かれるなど、文学的な余韻があって、格調高い本であった。個別事例についても深く踏み込みつつ、現代の精神医学的知見だけでなく歴史的社会的背景についても目配りが行き届いており、著者の幅広い教養と知性を感じる。感じ入りながら読んだ。自殺予防に関してマイルストーンになり得る本なのかもしれないと、個人的には高く評価する。

長岡利貞『自殺予防と学校―事例に学ぶ』ほんの森出版、2012年

【要約と感想】古荘純一・磯崎祐介『教育虐待・教育ネグレクト―日本の教育システムと親が抱える問題』

【要約】親が善意でやったことは、必ずしも子どもにとって良いこととは限りません。それは虐待の可能性があります。教育現場では、本質的に虐待が起きやすいものです。子どもは想像以上にストレスに弱いうえに、ストレスを抱えてしまうものです。子どもの主観的な立場に立って働きかけ方を考えましょう。

【感想】教育関係者に臨床的知見が届かない苛立ちを随所に感じることができる本だ。まあ、言っていることは分からないではない。個人的には、反省の材料としたい。
しかしまあ、それは逆にも当てはまってしまうことであって、個人的には、教育学的知見がまったく臨床家に届いていないことに落胆せざるを得ない。本書も教育学に関する勉強不足が随所に現れていて、残念な気持ちになる。門外漢のシロウトが専門外のことに口を挟むなら、もうちょっと勉強してもいいのではないかと思ってしまうのであった。
磯崎氏の文章は、とても興味深く読んだ。20世紀初頭の「生の哲学」を彷彿とさせる内容だ。

古荘純一・磯崎祐介『教育虐待・教育ネグレクト―日本の教育システムと親が抱える問題』

【要約と感想】小田貴美子『人とうまくつき合えない子どもたち』

【要約】不登校や引きこもりの子どもに苦労しているご両親向けの本です。
不登校や引きこもりになる子どもは、自己主張が苦手で、親など周囲に合わせて、気を遣って、ずっといい子を演じ続けてきて、疲れてしまうという特徴があります。本人が周囲のせいにして親を恨んでいる状態では、問題は解決しません。
本人がやりたいことを十分にやらせれば、そのうち自分で動きはじめます。親は、子どもが本来もっている力を信じましょう。

【感想】誤字脱字が多く、稚拙な表現が多いところが気になってしまった。「高校生の七割は煙草を吸っています」(42頁)とか、デタラメが平気で書かれていたりもする。こういうのを放置すると、本の全体的な信頼度が下がってしまう。編集者はもっと頑張ってもよかったのではないか。

小田貴美子『人とうまくつき合えない子どもたち―不登校・ひきこもり・ニート、その理解と支援』学事出版、2006年

【要約と感想】網谷由香利『子どもの「こころの叫び」を聴いて!』

【要約】子どもの話をよく聴けば、なんでも解決します。

【感想】オカルト全開で、ドン引きする本だ。エビデンス抜きの決めつけに満ちていて、これはさすがにマズい。クライアントが治っているならまだいいのだろうが、社会的な発言をするのなら歴史をしっかり勉強してからにしてほしい。
母親や保育者たちを威嚇してガッカリさせるような、教養が欠落した本だった。

網谷由香利『子どもの「こころの叫び」を聴いて!―笑顔を取り戻すための処方箋』第三文明社、2012年