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【要約と感想】渡部淳『アクティブ・ラーニングとは何か』

【要約】アクティブ・ラーニングの授業実践を具体的に紹介しながら、その理論、具体的な技法や手段、国際比較、日本の教育史を踏まえた展望、学校に導入する手法や段取り、学校や教育を超えたところで持つ意味など、多角的に議論を展開します。それらを踏まえると、これからの教育は「何を学ぶか」だけでなく「どのように学ぶか」が決定的に重要な時代に入ります。というのも、アクティブ・ラーニングの学習スタイルは、そのまま民主主義の手続きや運用のあり方と響き合っているからです。学校や教員関係者だけでなく、保護者も含めた一般市民がアクティブ・ラーニングの意義を捉えられるかどうかが、今後の民主主義社会の展開にとってとても重要になってきます。

【感想】良い本だった。私の授業で教科書に指定しようかと思ったくらいだ。(少なくとも来年度以降は「主体的・対話的で深い学び」に関わる参考図書として書名を提示することにする)。
 著者が豊富な実践経験を持っていることが本書の説得力を増しているのも確かではあるが、それ以上に「広い視野」を示しているところが類書との大きな違いのように感じた。アクティブ・ラーニングの実践事例だけなら教育関係雑誌からいくらでも引っ張ってくることができるわけだが、学校や教育の場面を離れたところで理論的・歴史的・社会的にどのような意義を持つかについては、お題目(知識基盤社会とかSociety5.0のような)の提示でお茶を濁す記事が多いように感じる。まあそれはそれで実践的に問題はないのではあるが、やはり射程距離を理論的に明らかにしているかしていないかで、実際に自分もやってみようという気になるかどうか、人を動かす説得力というところでは大きな違いは出てくるだろう。
 そんなわけで、私自身の大学の授業も一方的な講義型から参加・表現型へと意図的に切り替えつつあるところではあるが、その方向で大丈夫のようだと、意を強くした次第である。頑張ろう。

 ただ個人的には、文科省が今回の学習指導要領で敢えて「アクティブ・ラーニング」という言葉を一切使用せず、意図的に「主体的・対話的で深い学び」という言葉を前面に打ち出してきていることの意味は、学生たちにしっかり説明すべきだと思っているし、実際にそうしている。文科省の方としては、「アクティブ・ラーニング」という言葉が現場に無用な誤解を生んで意図せざる混乱を引き起こしたと理解しており、その見解を学習指導要領解説総則編で示している。学習の目標や意図を無視した単なる「アクティブ」なだけの授業が現場で蔓延してしまったことに対して、文科省は苛立ちを隠していない。このあたりの事情について、本書はまったく触れていない。
 「深い学び」を重視する立場と「アクティブ・ラーニング」を重視する立場の止揚が、今後の理論的課題になってきそうな予感はする(というかヘルバルトにしろデューイにしろ、ずっと前からそうなんだけど)。

渡部淳『アクティブ・ラーニングとは何か』岩波新書、2020年