毎日様々なニュースが流れてきますが、教育学を修めた立場として、それらをどのように理解したか、主観的な感想と見解を述べます。あくまでも主観的です。
教育全般
■「大学入試」の迷走はゼロ戦に似ている:竹内洋×佐藤優対談(幻冬舎GOLD ONLINE)
教育学的な知見を踏まえると、国際的な潮流を無視したガラパゴスな見解に終始しているように見える。まあ、国際的な潮流を押さえた上で、日本固有の歴史的社会的状況に相応しいと思ってガラパゴスを推奨しているのなら問題ないけれど、普遍的に妥当すると考えているなら大問題。
■広がる「午前5時間制」 給食前に集中、下校前倒し 授業時間確保、教職員多忙解消も(静岡新聞)
いわゆる『学習指導要領』が言うところの「弾力的な運用」の実例で、各学校の工夫と苦労が偲ばれる記事だ。給食の時間が削られるよりは健全ではあると思いつつも、しかし根本的な問題はあくまでも『学習指導要領』を法的根拠として押しつけてくる「教育内容の過密」にあることは見失われてはならない。
■日本が「読解力」で世界15位に転落…でも本当の問題はここからだった!(讀賣新聞)
マスコミ全般の扇動的な論調に比べれば、落ち着いた論評ではある。読解力低下の原因分析については我田引水の印象を受けなくもないが、まずは多様な意見があっていいとは思う。
■受験英語は役に立つ ビリギャルも納得の勉強法は?(NIKKEI STYLE)
岡田祥吾氏の本(『英語学習2.0』)は読んだことがある。教育学的な知見から見ても、まっとうなことが書いてあった。この記事は、本に書いてあったことの簡易版だった。
■東大卒ママが「共通テスト」に吠える! 重要な試験を大人の都合で邪魔するな(AERA dot.)
まあ、おおむねおっしゃる通りというか、これが最大公約数的な意見じゃないだろうか。
■児童大幅減で4小学校統合へ「多くの仲間と学ぶ環境を」(岐阜新聞Web)
学校の統廃合は、本当に切実な問題だ。記事のケースでは、2011年に反対していた地域住民の大半が、2020年には賛成に回ったという。この間の客観的情勢の変化(少子化など)の他、教育行政関係者の努力がどうだったかは気になる。
■県立高入試願書、性別欄を廃止 3月から「選抜に関係ない」 男女同定員の県立中は継続 佐賀(佐賀新聞LiVE)
事務処理的に意味のない欄はどんどん合理的に廃止していけばいいと思う。が、そういう問題ではなく、ジェンダー論的な観点を突きつめようとすると、考えるべき要素の多いややこしい議論になる。
■子どもの「課題解決力」を育む対話とは[やる気を引き出すコーチング](ベネッセ教育情報サイト)
理屈としては間違っていないと思うのだが、最終的にはどれだけ引き出しが多く懐が深いかの勝負になる。そこで「教養」と「経験」が重要になる。
■プログラミング教育 小学校で必修化 論理的思考を育成へ 関心示す児童、教員は不安も(長崎新聞)
実践例が少しずつ蓄積されつつある。実践が理屈通りにいくかどうか、今後も注目なのであった。
■プログラミングを楽々習得する子の学びのコツ(東洋経済ONLINE)
タイトルの付け方が悪質なところ以外は、プログラミング教育の基礎を押さえていて、ちゃんとした記事。
■ゲーム依存の解決策は?鳴教大で専門家がシンポ(徳島新聞)
そもそも「ゲーム依存症」という概念にどれほどの科学的根拠があるのか疑問を持ちつつ、推移を見守っている。根本的な問題は「現実というゲーム」がクソゲーなところじゃないのかとは思っている。
■「PTAを退会しようか迷っています」という投稿に共感の嵐 「辞めたいけど、辞めたら周りからコソコソ言われるだろうな」という本音も(キャリコネニュース)
本来なら「教育の公共性」という観点から抜本的に立て直す必要がある。ものごとを「損得」で考えている限り、問題は悪化する一方だろう。
■断る女子学生に「タクシーに乗ってこい」…講師、深夜の懇親会に呼び出す(讀賣新聞)
他山の石にする。
いじめ・不登校
■中川翔子さんが「いじめ」を経験したあの頃「今は楽しそうな大人の背中を見せたい」(DANRO)
勇気が出る、素敵な話だった。私みたいな立場の人間が理屈をこねるよりも、子どもたちにとっては説得力がある言葉だろう。
■中3生徒“いじめ自殺”で…第三者委が市民に調査結果報告 「教職員がもっと鋭敏な感覚を」の声も(東海テレビ)
第三者委員会による調査報告書がしっかり公表される状況は、とても好ましい。確かな情報が共有されなければ、「公共性」をつくる基盤などできない。
■教職員1600人「ハラスメントある」…神戸教諭いじめ発覚後に調査(讀賣新聞)
なんとも、いやはや。子どもに対するいじめ実態調査と並行して、教職員に対してもいじめ実態調査を行なう必要があるという現代日本。そして学校だけでなく、きっと民間企業も想像通りなことになっているだろう。はたしてこれは学校や教育だけの問題か?
■マタハラで終業式5日前に小学校を去った41歳女性教師 教員志望者減少の背景にある悪しき慣習(AERA dot.)
いろいろ考えるべきことはあるにせよ、根本的に言えば、国が教育費を増やして教師が増えれば簡単に解決する問題であることだけは間違いがない。
■【特集】不登校児たちに「眠る才能」…引き出されたのは何故? 異才発掘に挑む東大教授(カンテレ)
学校という空間が極めて異常であることに、多くの人が気づきつつある。もっと柔軟でいい。
■娘が進学校をやむなく退学、43歳女性に立ちはだかった養育費2万円の壁(大人んサー)
暗澹たる気分になる話ではある。
しかし問題は経済的資本だけでなく、文化的資本にもある。文中にしれっと「学歴が「専門学校卒」の桃さんは知らなかったのです。」と書いてあるが、これはまさに文化的資本の問題だ。ライターに教育学の知識があったら、もっと深い内容にできただろう。