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【要約と感想】鹿嶋真弓『教師という生き方』

【要約】教師はたいへんですが、やりがいのある仕事です。喜びを一度知ったら、やめられません。特に、学級担任の仕事が醍醐味です。
教師として生きるには、「情熱」に加えて、「技」が必要になります。その技として、構成的エンカウンターは効果的です。崩壊した学級を立て直してきました。
女性の教員は確かに大変ですが、担任としては「当たり」です。

【感想】前向きで、元気が出る本だ。学級経営の際に具体的に役に立ちそうな技も紹介している。特に教員を目指す女性にお薦めの本かもしれない。大学生になってからではなく、高校生のうちに読んでおくといいのかも。
出産や育児に関して、状況はいくぶん改善されているので、そのあたりはフォローしておいたほうがいいのかも。

鹿嶋真弓『教師という生き方』イースト新書Q、2017年

【要約と感想】森川正樹『教師人生を変える!話し方の技術』

【要約】話し方が上手になるには、日々のマメな努力と工夫の積み重ねが大切です。

【感想】まあ、そう簡単に話がうまくなる裏技なんて、ないよなあと。コツコツと、日々の努力と工夫で技術を磨いていくしかない。そりゃ、そうだ。
どちらかというと、誰でも使えるパッケージ化された技の紹介ではなく、心の持ちようとか、姿勢とか態度とか、そういったソフトスキルのほうが大事だというメッセージ集だった。まあ、そりゃそうだ。

森川正樹『教師人生を変える!話し方の技術』学陽書房、2017年

【要約と感想】河合敦『吉田松陰と久坂玄瑞』

【要約】吉田松陰の人となりが、松下村塾の塾生たちに大きな影響を与えました。

【感想】幕末維新期をどう見るかというとき、いくつかの立場があって、まず会津藩や新選組に感情移入するような佐幕派があり、もう一方に坂本龍馬や高杉晋作のような進取の無頼派に感情移入する立場がある。吉田松陰や久坂玄瑞に惹かれるのは、比較的マイナーな立場なのかなと思い込んでいるが、いかがか。ちなみに私はさらにマイナーで、佐久間象山とか横井小楠とか橋本左内のような学者に関心を持つタイプであり、そういう意味で吉田松陰も気になる人物だ。

本書はオーソドックスに書簡などの一次資料を交えながら、松陰と玄瑞の人となりを淡々と描いていく。極端な私見を交えることがなく、安心して読める本ではある。逆に言えば、それ以上でもそれ以下でもないといったところか。
学問的には、松陰の業績は明治以降に必要以上に盛られているとする見解もあったりして、評価はなかなか難しい。まあ、信長などと並んで、日本人離れした、他に類を見ない、得がたいキャラクター(後に作られたとしても)であることは間違いないところではある。今後もある種の教師の模範としてもてはやされ続けるのだろう。

【メモ】
松陰が獄中から妹に出した手紙の中に、次の一節がある。

「およそ人は、天地の正しき気を得て形を拵へ、天地の正しき理を得て心を拵へたるものなれば」

朱子学の理気二元論を土台として、「理/気」=「心/形」という二項対立を示している。この儒教的な心身二元論の射程距離が、かねてから気になっている。松陰が胎教を語るときに言及していたことは、記憶しておきたい。

河合敦『吉田松陰と久坂玄瑞―高杉晋作、伊藤博文、山県有朋らを輩出した松下村塾の秘密』幻冬舎新書、2014年

【要約と感想】林純次『残念な教員―学校教育の失敗学』

【要約】自ら成長することをやめた教員には、教壇に立つ資格がありません。教師は、常に自分自身の行為を反省し、研鑽を続けなければいけません。

【感想】毀誉褒貶が激しい本だろうなあと推測したら、やはりamazonレビューの評価が真っ二つに割れていて、笑ってしまった。低い評価をつけた人の一部が著者の人格攻撃に出ているのも、日本ではお馴染みの光景である。特に著者自身を「おまえ自身が残念な教師だ」などと言って貶めて何か言った気になっている人の読解レベルは、極めて低い。いやはや。

個人的に思うところでは、文章を「批判的」に読める人だったら、しっかり自分の成長の糧とできる内容のはずだ。単に反発を覚えたのなら、それは文章を「批判的」に読めていない可能性が高いだろう。低評価を付けている人が多いということは、いかに文章を「批判的」に読めない人が多いかという証拠のようにも思えるのだった。そしてそれは、タイトルの付け方の失敗により、おそらく著者が想定していた以上の読者に読まれたせいでもあるかもしれない。

本書から一番学ぶべきことは、著者が不断の努力を怠らず、常に自己研鑽に努めているという、姿勢と態度そのものだ。具体的に学ぶ内容が個々の課題によって異なるのは、当たり前のことだ。そこが違うからと言って攻撃しても、何も意味はない。
的外れな批判を気にせず、信念を貫きつつも、「素直」に、さらに研鑽を続けて欲しいと思ったのであった。そんな姿を、きっと生徒はちゃんと見ていると思う。

林純次『残念な教員―学校教育の失敗学』光文社新書、2015年

【要約と感想】沼田晶弘『子どもが伸びる「声かけ」の正体』

【要約】成功体験が増えれば、子どもは本来もっている力を発揮します。ある小学校教師の学級経営が成功した体験を、ご覧あれ。

【感想】小学校の先生(を目指している学生)向けの本。うまくいった学級経営の成功体験が綴られている。ということで、「成功体験」の一例と理解して読めば、とても参考になる。「MC型授業」とか「プロジェクト」とか「おあずけの法則」とか「ダンシング掃除」とか「ディベート朝の会」とか、とても頑張っている。まず内容がどうこう以前に、ここまでアイデアをたくさん出して、具体的な実践にまで落とし込んでいく実行力に、頭が下がる。

書評を見ていると「参考にならない」って言っている人がいるようだけど、こういう生産性の欠片もない非難がいちばん有害だなあと思う。沼田先生の「子どもたちの力を引き出すためにアイデアを出して具体的な実践まで持っていく」という姿勢そのものが学びの対象じゃないのか。

ま、とはいえ、本書が「成功体験」のみで構成されていることも意識する必要はあるのだろう。本書で示された成功体験をそのままマネしても、うまくいくはずがない。どこの小学校でも取り入れられるわけではない。目の前の子どもの実態を正確に捉えられるかどうかが、まずは課題のはずなのだ。具体的な実践として何を採用するかは、それからの話だ。子ども不在で実践の話をしても、あまり意味がない。

本書から学ぶものは、「子どもたちの力を引き出すためにアイデアを出して具体的な実践まで持っていく」という姿勢(つまり教師として必要なメタ視点)なのであって、個々の具体的な実践ではないだろう。個々の具体的な実践は、目の前の子どもの特性に合わせて教師自身が工夫して捻り出していくしかない。教師自身が工夫し続けること(ソフトスキル)の尊さを読み取れず、単に具体的な実践(コンテンツ)のみに目を奪われていると、本書を褒めるにしてもけなすにしても、どちらにしてもおかしなことになるだろう。

しかしさすがに、タイトルにある「声かけ」と中身にほとんど関連がないのはよろしくないだろう。本書に違和感を抱くとしたら、その原因の大半はタイトルと内容のミスマッチにあるだろうと推測する。タイトルは「教師がチャレンジし続けると、子どもは伸びる」くらいでよかったのではないか。

沼田晶弘『子どもが伸びる「声かけ」の正体』角川新書、2016年