「講義」カテゴリーアーカイブ

教育概論Ⅰ(保育)-14

できるかどうか、チェックしよう。

子供と大人の境界線(2~4)

□前近代の子供が置かれていた状況を、現代と比較して説明することができる。
□子供と大人の違いを、労働や遊びという観点から説明できる。
□「生理的早産」という言葉を使って、人間が他の動物とどう違っているか説明できる。
□「形成」や「イニシエーション」という言葉を使って、昔の教育がいまの教育とどのように違っているか説明できる。

リテラシーの教育(4~6)

□「リテラシー」という言葉の意味を説明できる。
□どのようにリテラシーが必要とされていったか、説明できる。
□リテラシーを必要とする教育が、それまでの人間形成とどのように違っているか説明できる。
□個人主義が成立する過程を説明できる。

民主主義の教育(6~10)

□社会契約論の論理を説明できる。
□民主主義において憲法が果たしている役割を説明できる。
□「自由権」について説明できる。
□「人格の完成」について説明できる。
□「個性」「アイデンティティ」「自由」「理性」「自己実現」という言葉の意味を説明できる。
□近代教育思想の特徴を説明できる。

義務教育(11~13)

□自由権だけでは世の中がうまくいかない理由を説明できる。
□学習権の思想について説明できる。
□「社会権」について説明できる。
□「義務教育」について説明できる。
□「教職の専門性」について説明できる。
□教育において国家の果たす役割を説明できる。
□「新教育」について説明できる。
□「特別支援教育」について説明できる。

教育概論Ⅰ(栄養)-14

▼短大栄養科 7/18

前回のおさらい

・国語による国民統合。方言矯正。
・日本のナショナリズム。教育勅語。

日本のナショナリズム(つづき)

教育勅語

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
・元田永孚と井上毅。儒学主義と近代主義の混交。
・国民国家形成(私は日本人であるという意識の形成)と教育勅語。
・教育勅語を中心とした教育体制の構築。国語、歴史、地理との関係。
・失効確認:教育勅語の何がどのように問題なのか?
→戦後新教育体制へ。日本国憲法と教育基本法。

ナショナリズムの効力と限界

・国民統合の推進。
・排除の構造。制御の困難。

半年のまとめ

リテラシーの教育

・文字を必要としなかった前近代の教育。「子供はいなかった」「形成」「イニシエーション」。
・印刷術の発明によって、人々がリテラシーの獲得を目ざすようになった。
・現在、コンピュータ通信技術の発展により、新たなリテラシー獲得が問題となっている。

自由権としての教育

・市民革命と社会契約論。身分制を破壊して、自由と平等な社会へ。
・新しい社会には、新しい人間が必要とされる。
・人々の教育に対して、国家が関与するべきでない。

社会権としての教育

・自由のワナ。児童労働の発生。自由権としての教育の限界。
・すべての子供に学習権を与える。親と国家の責任。
・教育権の構造。教職の専門性。

国家と教育

・教育に対して国家が関与すべきか、すべきでないのか。
・ナショナリズムの強さ。教育によるナショナリズムの創出=国旗、国歌、国語。
・日本のナショナリズム。教育勅語の意義と限界。

予習と復習

来週はテスト。

教職基礎論(栄養)-13

▼短大栄養科 7/15(土)

前回のおさらい

・生徒指導。体罰。いじめ。

職務

・学校教育法に、職務ごとに行うべきすべての仕事が包括的に規定されている。(小学校は第37条、中学校は第49条)
・職務には、「必置(置かなければならない)」のものと「任意設置(置くことができる)」のものと「原則必置(置かないことができる)」のものがある。
・「校務をつかさどる」ことと「校務を整理」すること(管理職の仕事)と、「教育・養護・栄養の指導及び管理をつかさどる」こと。
・つかさどるとは?
・整理とは?
・さらに校長は「所属職員を監督」する。

学校教育法第37条
小学校には、校長教頭教諭養護教諭及び事務職員置かなければならない
2  小学校には、前項に規定するもののほか、副校長主幹教諭指導教諭栄養教諭その他必要な職員を置くことができる
3  第一項の規定にかかわらず、副校長を置くときその他特別の事情のあるときは教頭を、養護をつかさどる主幹教諭を置くときは養護教諭を、特別の事情のあるときは事務職員を、それぞれ置かないことができる

4  校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。
5  副校長は、校長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
6  副校長は、校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行う。この場合において、副校長が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、その職務を代理し、又は行う。
7  教頭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。
8  教頭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)に事故があるときは校長の職務を代理し、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)が欠けたときは校長の職務を行う。この場合において、教頭が二人以上あるときは、あらかじめ校長が定めた順序で、校長の職務を代理し、又は行う。
9  主幹教諭は、校長(副校長を置く小学校にあつては、校長及び副校長)及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の教育をつかさどる。
10  指導教諭は、児童の教育をつかさどり、並びに教諭その他の職員に対して、教育指導の改善及び充実のために必要な指導及び助言を行う。
11  教諭は、児童の教育をつかさどる。
12  養護教諭は、児童の養護をつかさどる。
13  栄養教諭は、児童の栄養の指導及び管理をつかさどる。

校務分掌

*校務:学校運営に必要な一切の事務。
*分掌:分けて、掌る。役割を分担して、適切に仕事を把握して処理する。
・総務、教務、進路指導、生徒指導、保健、図書、環境管理、防災、情報、研修、教育実習担当、インターンシップ担当、道徳教育推進、特別支援教育推進、各種委員会、etc.

チームとしての学校

・「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」平成27年12月。
・教職員が、様々な専門性を持つ学校外の人材と協力しながら、学校運営に当たる体制。
←外国の教員は授業に関する業務が大半を占めているが、日本の教員は様々な仕事を行っており、勤務時間も長い。
←学校が複雑化・多様化した課題を解決し、子供に必要な資質・能力を育んでいくためには、学校のマネジメントを強化し、組織として教育活動に取り組む体制を創り上げるとともに、必要な指導体制を整備することが必要。

(1)専門性に基づくチーム体制の構築。
・心理や福祉に関する専門スタッフ。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー。
・授業等において教員を支援する専門スタッフ。ICT、資格、外国語。
・部活動に関する専門スタッフ。
・特別支援教育に関する専門スタッフ。

(2)学校のマネジメント機能の強化。
・校長のリーダーシップの発揮。補佐体制の強化。
・管理職の養成と適材確保。主幹教諭制度の充実

(3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備。
・人材育成の促進。
・業務環境の改善。
・教育委員会等による学校への支援の充実。

地域との連携

・「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」平成27年12月

(1)地域とともにある学校への転換。
(2)子供も大人も学び合い育ち合う教育体制の構築。
(3)学校を核とした地域作りの推進。

コミュニティ・スクール

・すべての公立学校がコミュニティ・スクールを目ざす。
*学校運営協議会:学校を応援し、地域の実情を踏まえた特色ある学校作りを進めていく役割。
・校長の定める学校運営の基本方針の証人、学校運営に関する意見、教職員の認容に関する意見。

復習

・職務や校務分掌を踏まえて、教師の仕事について具体的なイメージを持とう。
・チーム学校やコミュニティ・スクールなど、新しいシステムについて押さえておこう。

予習

・教員の仕事を、おさらいしておこう。

教育概論Ⅰ(中高)ー13

▼栄養・環教 7/14
▼語学・心カ・教福・服美・表現 7/15

前回のおさらい

・産業革命による階層分化。労働者を速成する教育。
・隠れたカリキュラム。

人間の範囲の拡大

・「白人+男性+キリスト教徒+中産階級」のみを人間とした市民社会から、様々な人々の努力により、徐々に人間(人格を持ち、自由と権利を行使できる者)の範囲が拡大していく。労働者、女性、異教徒(無神論者)、子供、障害者。→動物?
・権利の拡大過程。男子普通選挙権(労働者への公民権拡大)。
・女性参政権。フェミニズム(女権拡大論)。
・植民地の独立。公民権運動。
・児童の権利に関する宣言(1959年)。児童の権利条約(1989年)。児童が保護の対象から、権利の主体へ。
・障害者権利条約(2006年)→障害者基本法、障害者差別解消法。

新教育

・20世紀初頭から世界的に広まった教育運動。主知主義的な教育を批判し、子供の自発性や能動性、創造性を重視する。
・児童中心主義。子供を「客体」として扱うのではなく、子供が「主体」となる。「教育する=教師や学校が主語」のではなく「学習する=子供が主語」。

ジョン・デューイ John Dewey

・アメリカ出身。1859年~1952年。
・著書:『学校と社会』『民主主義と教育』
・キーワード:コペルニクス的転回。実験学校。問題解決学習。
・名言:「なすことによって学ぶ。」

エレン・ケイ Ellen Karolina Sofia Key

・スウェーデン出身。女性。1849年~1926年。
・著書:『児童の世紀』
・名言:「教育の最大の秘訣は、教育しないことにある。」←ルソーの消極教育の影響。

モンテッソーリ Maria Montessori

・イタリア出身。女性。1870年~1952年。
・著書:『幼児の秘密』『子どもの発見』
・キーワード:子供の家。感覚教育法。教具。自発性。整えられた環境。

特別支援教育

・平成19年の学校教育法改正により、すべての学校(幼稚園含む)で特別支援教育を推進することが明確となった。
・「特別支援教育の推進について(通知)」2007年。
・「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」2012年。

特別支援教育の理念

共生社会:障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が活き活きと活躍できる社会。誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を相互に認め合える全員参加型の社会。
インクルーシブ教育:障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするためにも、障害のある子供が障害のない子供と共に教育を受けられる仕組み。
教育的ニーズ:子供が必要としている支援。
合理的配慮:障害のある子供が、他の子供と平等に教育を受ける権利を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子供にたいし、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの。体制面・財政面において、均衡を失した過度の負担を課さないもの。
ユニヴァーサル・デザイン:あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方。

発達障害

発達障害:これまでの特殊教育の対象とはなっていなかった、知的な遅れのない障害。
LD(学習障害):知的発達に遅れがないが、聞く・話す・読む・書く・計算するなどの能力のうち、特定の分野に極端に苦手な側面が見られる。
ADHD(注意欠陥多動性障害):注意力や衝動性、多動性などが年齢や発達に不釣り合いで、社会的な活動や学業に支障をきたすことがある。
高機能自閉症・アスペルガー症候群:他者の気持ちを察することや周りの状況に合わせたりする行動が苦手だったり、特定のものにこだわる傾向が見られる。

学校の仕事

校内委員会:校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立し、実態把握や支援方策の検討等を行うために設ける組織。
特別支援教育コーディネーター:各学校における特別支援教育の推進のために、情報収集、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口となる。
個別の教育支援計画:特別支援学校では、ひとりひとりの教育的ニーズに応じた支援を効果的に実施するため、乳幼児期から学校卒業後までの一貫した長期的な計画を作成する。作成にあたり、医療・福祉・労働などの関係機関と連携し、保護者の参画や意見を聞く。
個別の指導計画:特別支援学校では、障害のある子供ひとりひとりの教育的ニーズに対応して工夫され、学校における指導内容・方法を盛り込んだ指導計画を作成する。

復習

・新教育にかかわる人物を、著作やキーワードとともに押さえておこう。
・「特別支援教育」の理念と、学校や先生が携わる具体的な仕事について理解しよう。

予習

・初回から今回までの授業内容を、おさらいしておこう。

 

教育学Ⅰ(新松戸)-13

▼新松戸キャンパス 7/14(金)

前回のおさらい

・産業革命による階層分化。労働者を速成する教育。
・隠れたカリキュラム。

「近代教育」のさまざまな形

(1)リテラシーの教育

前近代では、人々は所属する身分や共同体で生きるのに必要な知識・技能を身につけるため、基本的に親と同じような人間になればよかった(形成、イニシエーション)。リテラシーは必要なかった。しかし近代以降、印刷術による情報伝達に対応するため、リテラシーが生きる上で必要不可欠な知識・技能となる。
さらにコンピュータの登場に典型的なように、情報伝達手段が大きく変化した時、新しい知識・技能に対応できなければ、生き残ることができなくなってしまう。

(2)人格形成の教育(自由権としての教育)

市民社会の形成に伴って、新しいタイプの人間が必要となる。前近代では、身分や共同体に応じた人間形成を行っており、身分や共同体の違いを超えた普遍的な人間形成は必要とされなかった。しかし市民社会においては、すべての人間を生まれながらに自由で平等なものと考える。すべての人間に共通する教育が、新たに必要とされる。
かけがえのない個性を自覚し、アイデンティティを確立し、責任を伴った自由を獲得し、理性を育み、自分自身の人生を自分で決定する(自己実現)。自分の人生を決めるに当たっては、どんな権力者からも命令されるいわれはない(自由権)。

(3)義務教育(社会権としての教育)

産業革命の進展によって、資本家と労働者の階層分化が激しくなり、資本家は自由権としての教育を享受することができる一方で、貧しい労働者の子供たちは児童労働を余儀なくされていた。すべての子供たちが教育を受ける権利を保障されるためには、有利な側の人間たちの自由を制限し、自分では自由に到達できない人々に実質的な自由を与えるような、新しい権利が必要となる(=社会権)。社会権を保障するのは、国家に期待される役割となる。

(4)産業が必要とする教育

急速な階層分化により、都市には貧しい労働者たちが大量に流れ込み、衛生や治安に関する問題が発生した。この新たな都市問題を解決しようとする時、安く早く大量に優秀な労働者を作るような学校システムが開発される。
一方で、産業をさらに発展させるためには、有能な人材をより難しく重要な仕事に、取り柄のない人材を誰でもできる単純な仕事に割り振るなど、適材適所の人材配分を行う必要がある。人々の個性を見極め、適切に配分する機能が教育に期待される(メリトクラシー、学歴主義)。難しい仕事を受け持つことが期待される優秀な人物には最先端の知識を着実に身につけてもらう必要がある(正式のカリキュラム)が、特に難しい仕事をする訳ではない人々には難しい知識を身につけてもらう必要はない。しかし自分の生活と切り離された(分業された)単純労働を文句も言わずに黙々と続けてもらうための能力は、知らず知らずのうちにいつの間にか身につけてもらう(隠れたカリキュラム)。

(5)国民国家(ナショナリズム)の教育

教育学Ⅱで詳述。

現代教育のうごめき

・「近代」から「現代」へ。
・近代と現代の境界線については様々な議論があるが、ある特定の年代を想定するわけではない。近代という時代の特徴(市民社会・資本主義・世界史等)を踏まえた上で、その有効性が崩れてきている新たな時代を「現代」と捉える。

(1)メディアと教育

・ポストマン『子どもはもういない』1985年。子供のような大人、大人のような子供。秘密のないメディア。大人と子供の境界性の崩壊。
・インターネットの急速な展開。コミュニケーション様式の根底からの変貌。「1×1」→「1×n」→「n×n」。タテマエとホンネの境界線の崩壊。
・そもそも教育にとって学校という形は絶対に必要なものなのか?

(2)自己実現のワナ

・「自由」は本当にすべての人々を幸せにするのか?
・すべてを自分で決めなければいけないことのつらさ。「夢を持つ」ことの難しさ。「やりたいこと」や「なりたい自分」が見つからないとき。
・たとえば「自由に作文を書け」と言われた時の子供たちの困惑。「内面」の強制的な捏造。むりやりに「やりたいこと」や「なりたい自分」を捏造しなければならない圧力。
・肥大化する自己愛と自己顕示欲。リア充アピール。
・承認の欠如。自分探しの旅と自己啓発セミナー。ひきこもり。
・個人主義の限界。そもそも「何が幸せ」なのか、わかっているのか?
・かといって「絆」とか「愛は地球を救う」などという言葉に信頼を置けるか?

(3)権利としての教育?

・貧困の再生産。権利を保障されない子供たち。
・単なる再配分機関としての学校。偏差値至上主義。権利を権利と思えない子供たち。学校に期待を寄せるどころか、学校によって希望を奪われる。
・学校化する社会。マンガ家養成校、アイドル養成校等。あらゆる専門知識が学校知に分解・再編成され、パッケージ化され、商品化・市場化される。学校に行けば(金を払えば)必要な知識が手に入る。
・教育は市場化されたサービス(消費財)の一種に過ぎないのか?→「教育と市場」に関わる問題は、教育学Ⅱで詳述。

(4)労働と教育

・分業体制によって、「働く」ということの意味が拡散。生活することと働くことの乖離=疎外。生活することが「消費すること=お金を使うこと」と同じ意味になってしまうと、働くことは生きることではなく単に「お金を稼ぐこと」になる。
・生活の全体性(生きる意味)を取り戻すことはできるか?
・AI(人工知能)への恐怖と期待。仕事を奪われるのか、それとも人間が働くことの意味を取り戻すのか?
・人間だからこそやれることとは、何か?

復習

・近代になって成立した「教育」の形を総合的に捉えよう。
・近代教育が崩れかけて様々な問題が生じていることを認識し、これからの教育の姿を構想してみよう。