【要約と感想】浅野大介『教育DXで「未来の教室」をつくろう』

【要約】義務教育段階での一人一台端末が実現しましたが、まだ入口です。本気で教育DXを進め、「学びの自律化・個別最適化」と「学びの探究化・STEAM化」を本格化しましょう。生徒の学び方と教師の働き方が根底から変わります。
 経済産業省だからこそできる仕事かもしれませんが、あくまでも文部科学省と対抗したいわけではありません。文科省の言う「生きる力」を本当に育てる教育を目指しましょう。

【感想】単に机上の空論に終始するのではなく、先行している具体的事例を踏まえて帰納的に理論を組み上げ、そしてその理論から演繹的に実践例を構想して、実際に実現にこぎつけるという、理論と実践の往還が、話に説得力を持たせている。そうやって前のめりに新しい時代に対応していけるところは、どんどん実現していけばいいのだろう。止める筋合いはない。今は、前に進める人たちからどんどん進むべき時間帯だ。先に進むために、教育学が積み重ねてきた知見と知恵は大いに役に立つだろう。
 忘れてはいけない問題は、ついて行けない人や置いて行かれる人が必ず出る、というところだ。ついて行けない人や置いて行かれる人の存在を言い訳として改革を止めるようなことをせず、そしてそれでもついて行けない人や置いて行かれる人を少しでも減らし、あるいはケアするために、おそらく経済産業省が関心を示さない教育学の知恵が必要になってくる。

【要検討事項】教員免許制の柔軟化や標準授業時数の廃止(217頁)、デジタル教科書制(218頁)や就学義務の柔軟化(221頁)にまで踏み込んでいるところは、メモしておく。仮にこれらが実現したら、もう文部科学省の存在意義自体がなくなりそうなものだ。

■浅野大介『教育DXで「未来の教室」をつくろう―GIGAスクール構想で「学校」は生まれ変われるか』学陽書房、2021年