【感想】明治錦絵×大正新版画―世界が愛した近代の木版画

神奈川県立歴史博物館で開催されている「明治錦絵×大正新版画―世界が愛した近代の木版画」を観てきました。素晴らしい展示でした。

明治期に入ってからの版画は、江戸時代の浮世絵の伝統を引き継ぎながらも、さらに西洋のエッセンスを吸収して進化して、凄いことになっています。パッと見で目につくのは、やっぱり色の鮮やかさですね。展覧会の副題でも「極彩色の新世界/日本標準」と謳っているとおりです。伝統的な岩絵具では出せなかったような鮮やかな発色が、文明開化による技術革新によって可能になったということなんでしょう。明治錦絵では、特にカーマイン調の「赤」が目立ちます。赤色の使い方が、惚れ惚れと素晴らしいです。江戸時代の赤は、いわばバーミリオンとかスカーレットで、「朱」なんですよね。

大正新版画は、一転、「青」がとても印象深い作品が多かったです。グラデーションの青が、深くて、吸い込まれそうです。なんとなく、新海誠の背景を思い浮かべます。もちろん新海誠と大正新版画の間には、透過光と反射光という技術的に越えられない壁が立ちはだかっています。が、全体的に高い彩度や、明度のコントラストの付け方や、色相選択の理念が、とても似ているように感じたのです。DNAが引き継がれているような印象を持ったというと、言い過ぎか。

ともかく、とても見応えのある展示会でした。新版画、一枚ほしいなあ。