【要約と感想】北俊夫『「ものの見方・考え方」とは何か』

【要約】授業が目指すことは、「一匹の魚」を与えることではなく「魚の捕り方」を身につけさせることです。ものごとを見る視点や考える方法を理解することは、子どもにとっては生きる力を身につけることになり、教師にとっては授業力を向上させることになります。

【感想】新学習指導要領では、「見方・考え方」という言葉が前面に打ち出されている。各教科の目標に「見方・考え方」という言葉が必ず盛り込まれている。主体的・対話的で深い学びとも密接な関連がある概念だ。
しかし学習指導要領を読むだけでは、その内実はあまりよく分からない。本書は、理解しにくい「見方・考え方」というものを噛み砕いて解説している。具体的な事例も数多く挙げられていて、分かりやすいように思う。

ただ教育史専門家から言わせてもらうと、このような考え方そのものは明治10年代の「開発主義教育学」に既に見られる。開発主義教育学は、単に知識を与えるような教育を批判して、「能力」を伸ばすことを主張した。そして具体的には観察や判断を通して「分析/総合」「帰納/演繹」といった論理的思考様式を身につけることを目指した。新学習指導要領が目指すものとまったく同じというわけだ。逆に言えば、150年前からあまり進歩していないとも言える。どうして進歩していないかをしっかり反省しないと、また同じ失敗を繰り返す。

北俊夫『「ものの見方・考え方」とは何か―授業力向上の処方箋』文溪堂、2018年