【教育学でポン!?】2020年1月9日

毎日様々なニュースが流れてきますが、教育学を修めた立場として、それらをどのように理解したか、主観的な感想と見解を述べます。あくまでも主観的です。

教育全般

入試改革を失敗させた上にまだ記述式に固執する残念な人たち<入試改革のあやまちを繰り返さないために2>(HARBOR BUSINESS)

個人的には、日本の大学入試の本質的な問題は、世界的に見てガラパゴスなところだと認識している。具体的には、日本は大学関係者が学生の「教育可能性」を判定しちゃっているが、海外では高校関係者が「到達度」を認定したうえで大学関係者が「マッチング」を考慮する形になっている。そういう教育学的知識を踏まえると、「記述式」かどうかを中心に入試の議論を行なうこと自体、理論的には局地戦にすぎないのであった。
まあ理論的には局地戦であっても、現実的には受験生たちに不必要な混乱をもたらしている以上、しっかり議論して解決しなければならないのであるが。

大学入試は卒試・書類・面接の3段階選考にすべきである(NEWSポストセブン)

まあ、この記事で主張されているのが、大学入試のグローバルスタンダードな姿である。特にこの人の独創というわけではない。しかしそういう基本的な知識を持たないだろうガラパゴスな反論がヤフコメに溢れかえるのは、いつもの光景なのであった。世間の前例主義を払拭しない限り、そう簡単に入試制度は変わらないですね。
まあガラパゴス自体が悪いわけではない。困るのは、それがガラパゴスだという自覚がなく、普遍的な見解だと勘違いしている場合だ。ガラパゴスであると自覚した上で、それが良いことだと主張するのであれば、まあ問題はない。

新聞やテレビを信じすぎる日本人の低い読解力(プレジデントオンライン)

PISA2018で日本の「読解力」が大きく低下したことに関する記事。要は、外国(あるいはPISA)が重要視している「批判的思考力」と日本文化の相性が悪いのが、日本の読解力が低下した要因と主張したいようだ。PISAに関する話を教育行政に限らず、日本文化全体の問題にしようという視点は、大事だと思う。

偏差値・東大至上主義をひっくり返す!? 教育現場のデータ化が起こす革命最前線(BUSINESS INSIDER)

非認知能力を数値化する技術が高まるに伴って、教育に関わる様々な常識が変わりつつある。この記事の指摘通りだ。教育学的につっこんで言えば、それによって「形成的評価」の精度と意義が格段に上がってきているということが重要なのだが。
ただそれが良いことか悪いことかについては、教育学の世界では20年ほど前から議論が積み重ねられてきている。批判の方向は2つあって、ひとつは「ハイパーメリトクラシー」が人格全体を消費することの善し悪し(たとえば松下佳代)、もうひとつは教育原理的に「教育の本質」を損なうという議論(たとえばガート・ビースタ)だ。
そして忘れてはならないのは、この傾向をビジネスチャンスと捉えて着々と準備を進めている勢力が存在することなのだ(具体的には、ベネッセですね)。

2020年は教育無償化が目白押し。知っておきたい“免除額”と“所得制限”(mi-mollet)

よく知られている通り、日本は世界一教育に税金を注ぎ込まない国だ。しかし雀の涙ほどの教育援助は出ている。とりあえず当事者は知っておかないと損をする。いやはや。

貧困・ひとり親家庭への支援が急務(ベネッセ教育情報サイト)

私の住む地域でも、子ども食堂や学習支援の輪が広がりつつある。実践的には地道な取り組みを応援しつつ、論理的には「自己責任論」の危険性をしっかり伝えていきたい。

ネットでも大炎上。川口市は『いじめ加害者』を守る地域なのか?(MAG2NEWS)

個別のいじめ事案に関しては、何が本当の事実かを正確に把握しない限り、なかなか見解を表明しにくい。いじめで苦しむ子ども(あるいは大人も)を一人でも減らすためにも、推移をしっかりと見守りたい。特に本事案では、「いじめ防止対策推進法」の内容と運用が議論の焦点になりつつある。教育学的にも、注目しなければならない。

子どもを「褒める」前に大切なこと(ベネッセ教育情報サイト)

アドラー心理学等でも言われていることではあった。私個人としても、実践的に有効なように感じる手法だ。

発達障がい者100人の声集め、ノートを開発(alterna)

発達障害者に使いやすいノートは、きっと全ての人にとって使いやすいノート。これが「ユニバーサルデザイン」の精神。読んで気持ちが良くなる記事。

「引きこもり」支援者に根強い“引き出せばいい”という錯覚の罪(DIAMOND online)

専門家の間ではほぼ常識になっていることが、なかなか一般に理解されないという感じではある。

日本人の英語強化に必要なのは入試改革だけじゃない(Newsweek)

まあ、ごもっともな見解だと思う。問題は、「じゃあどうすれば実現できるか」ではある。他人事ではなく、教育に関わるものとして私自身が考えていかなければならない。

筑波大の入試、身長・体重を受験生に書かせる(讀賣新聞)

正直、一読して意味がよく分からない記事だった。身長・体重を書かせることよりも、「大学入試を想定した技法ではない」という妥当性・信頼性の不明な心理テストを課していること自体がどうなんだって話にならないのね?

大阪市教委が学校統廃合を条例化へ 全国初「適正化で指導力向上」(毎日新聞)

学校の統廃合は、利権とか意地とか様々な要素が複雑に絡んで、大変なんだけれども。専門的な本(人口減小社会の公立小中学校の設計)も読んだことがあるけれど、本当に大変です。実質的にどう運用されるのか、注意して見たいところ。