【要約と感想】藤野京子『困っている子を支援する6つのステップ』

【要約】意地悪をしたり暴れたりする困った子に対して、頭ごなしに叱っても、問題は解決しないどころか、むしろ悪化します。問題行動のパターンを見極め、適切な支援を行なえば、確実に問題は解決し、子どもは成長していきます。

【感想】心理学の知見を応用しながら、現実的な問題対処のパターンを確立しようと試みている本だ。理論的背景はLSCI(Life Space Crisis Intervention)というものらしい。
6つのステップとは、(1)落ちつかせよう(2)整理させよう(3)見極めよう(4)気づかせよう(5)訓練しよう(6)準備させよう、ということらしい。そして問題のパターンにも6つあり、(1)現実誤認(2)問題の発生源(3)攻撃行動の正当化(4)自己価値(5)スキル(6)他者との不適切な関係、とのことだ。

本書はいろいろ具体的な対処を示しているわけだが、一言で言えば「メタ認知」とか「セルフ・モニタリング」という概念に集約されるように思った。子どもが意地悪や暴力など不適切な行動を起こしてしまうのは、要するに自分を客観視できておらず、その行動がどのような帰結を招くのか予測ができていないからだ。自分の行動や感情を第三者視点から分析できるようになれば、功利主義的に考える限り、不適切な行動は減るに決まっているのだった。いかにメタ認知の視点に気づかせるかが、具体的な対処のスキルとなってくる。

とはいえ、メタ認知ができる上で問題行動を起こす人間も、世の中には存在するわけだ。こういう人間に対しては、本書の対処法は役に立たないような気がする。
まあ、本書は素直な年齢の子どもを対象にしているので、あまり心配することもないのだろうけれども。

藤野京子『困っている子を支援する6つのステップ―問題行動解決のためのLSCI(生活空間危機介入)プログラム―』明石書房、2010年