【要約と感想】共同通信大阪社会部『大津中2いじめ自殺―学校はなぜ目を背けたのか』

【要約】2011年に発生した中学生の自殺は、どうして防ぐことができなかったのか、学校や遺族への綿密な取材を通して明らかにしようとした本です。
あわせて、いじめの実態を把握することがいかに難しいか、いくつかの実例を元に記します。また近年注目されるようになった第三者調査会の意義についても触れています。
いま、学校と教師は競争と管理に圧迫され、ゆとりを急速に失っています。教師がゆとりをもって同僚性を取り戻さない限り、解決は難しそうです。

【感想】いじめを扱った本、特に実例を丁寧に取材して再構成した本は、読んでいて暗澹たる気分になる。自殺した子どもの気持ちを想像すると、やりきれない気持ちになる。本書も、読んでいるうちに辛くなって、なかなか先に進まない。が、読まねばならぬ。最後の、生徒たちのアンケートが、重い。

意を強くしたのは、やはりいじめを解決するためには「同僚性」がキーワードになるということだ。教員同士のコミュニケーション量を増やし、情報を共有し、風通しを良くすることがいちばん大事なのだ。ひとりで問題を抱えても、ロクなことにはならない。個性的な教員がチームを組んで、一体となって解決に向かうのべきなのだ。一人の教員が単独で力をつけるだけでは、根本的な解決には至らない。
しかし、昨今の教育行政は、新自由主義の悪いところばかり強調して、競争と管理を強め、むしろ同僚性の破壊を推し進めてきた。子どものいじめを解決するどころか、教員同士でいじめが発生する始末だ。
本気でいじめを解決しようとするなら、教員一人一人の資質のせいにして責任を押しつけるだけでなく、教育行政が根本的に欠陥を抱えていることを疑った方がいい。

共同通信大阪社会部『大津中2いじめ自殺―学校はなぜ目を背けたのか』PHP新書、2013年