【要約と感想】大塚謙二『教師力をアップする100の習慣』

【要約】主に中学校の教師向けの本です。
教育とは、子どもたちの人格形成をお手伝いすることです。そのためには、教師自身の人格を磨き続けなければなりません。上司や先輩の技を盗み、地域や保護者にも気を配り、生徒の気持ちになって、様々な二項対立の極端に走らず、中庸をこころがけましょう。

【感想】「○○力」という言葉が盛んに使用されるようになったのは、いつの頃からか。
ちなみに「教師力」という言葉は、国会図書館デジタルライブラリーの検索によれば、1950-59年では1件、1960-69年では1件、1980-89年では3件、1990-99年は3件なのに対し、2000-09年では54件、2010年以降は61件となっている。21世紀に入ってから急速に使われるようになったことが分かる。(ちなみに50-99の計8件は、単に誤植の疑いが高い)

本書の内容自体は、まあ、ナルホドと思うことが多い。私自身も、自分の実践を振り返り、反省する材料としたい。
とはいえ、「教師力」という言葉を使うこと自体がどういう場を形成するかについては、原理的に考察すべき対象となる。個人的な直感では、けっこう怪しい気がしているわけだ。というのは、「教師力」という言葉を使うと簡単に「何か言った気になる」ことができるわけだが、そういう言葉こそ危険だからだ。
本書のように具体的な事例に噛み砕かれていれば問題ないのだが、抽象的な次元で話が進むと、かなり危ない気がする。

【言質】
「人格」という言葉の用法サンプルを得た。

「罪を非難しても、人格まで否定しないこと。」63頁
「自分自身の人格を高める努力をする」「人格は、地道な長期的なプロセスによってしか形成できないもの。」126頁

まあ、「教師力」とは、要するに完成した人格から発せられる総合的な力のことではある。何も言っていないのと同じという感じがするとすれば、そういうことなのだろう。

大塚謙二『教師力をアップする100の習慣』明治図書、2011年