【要約と感想】教育科学研究会編『いじめと向きあう』

【要約】いじめは、懲罰と権力では決して解決しません。いじめは、日本社会の構造に根ざしており、どの学校でも起こりえます。未然予防は本質的に不可能であって、学校や先生にできることは、致命的な結果を引き起こさないための対策です。対話と協調が重要です。いじめの解決を通じて、子どもたちが人間的に成長します。

【感想】いじめの理論、社会的背景、実例、解決へ向かうためのヒント、総合的にいじめを考えるための読書案内など、とてもバランスが良い内容になっている。初心者がまず読む本としてお勧めしやすい。単純な厳罰化が本質的な解決をむしろ妨げていることがよく分かるだろうと思う。ゼロ・トレランスは、仮に凶悪犯罪にはうまく対処できるとしても、学校や教育にはまったく馴染まない。
いじめ解決に成功した実践例は、とても参考になると思う。酷いクラスの中にも必ずいじめをなくしたいと思っている子がいるはずで、その子を孤立させず、粘り強く連帯させていくことが最終的に決め手となる。クラス全体の雰囲気をどう作っていくか、教師の手腕が問われるところになる。

教育科学研究会編『いじめと向きあう』旬報社、2013年