【要約と感想】葉養正明『人口減少社会の公立小中学校の設計―東日本大震災からの教育復興の技術―』

【要約】少子化の影響を受けて、小中学校の統廃合が急速に進行しています。小中学校の廃校は、拙速に行なうと地元に大きなダメージを与えます。が、学校規模が小さくなると教育活動そのものが成立しなくなります。学校の「適正配置」と「適正規模」のバランスを丁寧に考えていく必要があります。
人口減少への対応に関しては、統廃合以外にも様々な可能性があります。たとえば学校ネットワークの形成で成果を挙げている自治体もあります。
というか、単なる統合には限界が見えています。人口減少を逆手にとって、新たな学校と教育を創りだしていく可能性を模索するべきです。ポイントは、学校の自律性を見直して、地域の機能と要求を複合した「学校施設の複合化」を行ない、地域を活性化することです。

【感想】急速に学校の統廃合が進んでいることは、各地の教育委員会の方々との話を通じても実感する。厳しい状況にある。本書は、学校統廃合に関わる基礎データ、各自治体の考え方、学校配置に関する論理、国内や諸外国の先進事例、今後の展望と提言が示されていて、多面的な観点から大いに参考となる。

高度経済成長期の学校は地域から独立していて、むしろ地域を破壊するような施設だった。学校で学んだ子どもたちは地域に残らず、都会に出て行った。かつての学校は地域を脱出するルートとして機能した。
今後の学校は、地域と密接に一体化した施設として生まれ変わる必要がある。教育関係者だけでなく、様々な立場の人が知恵を出し合っていかなければならない。

ところで、雑誌連載をまとめたからか、内容が重複している部分が多かった。シェイプアップしたら、分量は半分くらいで済んだのではないか。内容は興味深いのだから、もうちょっと体裁を整えても損はしないんじゃないかと思った。
それから副題に掲げられた東日本大震災は、前書きと後書きでしか扱われず、本文内容の大半とは無関係であった。

葉養正明『人口減少社会の公立小中学校の設計―東日本大震災からの教育復興の技術―』協同出版、2011年