【紹介と感想】小川佳万・三時眞貴子編著『「教育学」ってどんなもの?』

【紹介】高校生向けに、「教育学」がどんな学問か、日々の疑問に答えながら、易しく解説します。

【感想】広島大学教育学部の叡智を結集した教育学入門書で、なかなか熱い。この熱さは、私にも初心を思い返させてくれて、とてもいい。私がどうして「教育学」を志したか、確認するいい機会になったのであった。

が、私が学部に進学したときは、吉澤先生は「反教育学」だったし、寺崎先生はフーコー権力論だったし、先輩たちからは筑波や広島(旧高等師範)に対する悪口(?)を聞かされるしで、教育の現実に対して前向きに取り組む姿勢は身につかず、近代教育の相対化に日々勤しんでいたのであった。ははは。なんだかんだ紆余曲折があって、今は教育学徒の一兵卒を自認しているわけではあるが、まあ、そんな人生。

【備忘録】
教育学の役目に関する記述が、若々しくて、熱い。

「ここからは私の個人的な意見ですが、いろんな研究者がそれぞれの目的に応じて教育の過去・現在・未来について研究することで、全体として教育学が、これまでの教育についてのできるだけ正確な地図を描き、それを踏まえて現在地を確定しつつ現在の状況を解明し、見据えるべき未来へと至る過程を提示する、これが教育学の学問としての役割なのだと思っています。」(183頁)

こういうメッセージをダイレクトに発する本って、実はあまりないよなあ。私も微力ながら一兵卒として頑張る所存である。

小川佳万・三時眞貴子編著『「教育学」ってどんなもの?』共同出版、2017年