【紹介と感想】田村学著・京都市立下京中学校編『深い学びを育てる思考ツールを活用した授業実践 公立中学校版』

【紹介】新学習指導要領では、アクティブ・ラーニングに代わって「主体的・対話的で深い学び」という言葉が打ち出されましたが、「深い学び」の具体的な中身は分かりにくいものでした。本書は、具体的な「思考ツール」を活用することで「深い学び」が実現できることを示しています。国語や数学など実際の学習活動の中でどのように思考ツールを使うかが分かりやすく示されており、様々な授業で応用できそうです。

【感想】著者の田村学氏は、別の著書『深い学び』で理論的に「深い学び」の在り方を明らかにしている。本書はその理論を踏まえた上での実践編といったところだ。ただの机上の空論ではなく、実際の授業の中で思考ツールを活用した記録が伴っているので、説得力がある。「深い学び」が何なのか困っている先生にとって、実際の授業で役に立つ何らかのヒントがある本かもしれない。
が、まあ、思考ツールを使うこと自体が目的になると本末転倒なので、「どうして手段として思考ツールを使う必要があるのか」を常に問いながら、「深い学び」について考えを深めていく必要があるだろう。表面だけ思考ツールを導入することに、さしたる意味はない。そういう意味で、理論編『深い学び』とセットになって初めて意味がある本であるように思える。

田村学著・京都市立下京中学校編『深い学びを育てる思考ツールを活用した授業実践 公立中学校版』小学館教育技術MOOK、2018年