教育の基礎理論-12

前回のおさらい

・資本主義の世界の教育。ドラえもん構造。
・隠れたカリキュラム。

新教育

・20世紀初頭から世界的に広まった教育運動のことです。様々な人が活躍しますが、ほぼ共通して、主知主義的な教育を批判し、子供の自発性や能動性、創造性を重視します。日本では大正期(1912年~1926年)に流行し、大正新教育運動と呼ばれます。

人間の範囲の拡大

・「白人+男性+キリスト教徒+中産階級」のみを人間とした市民社会から、様々な人々の努力により、徐々に人間(人格を持ち、自由と権利を行使できる者)の範囲が拡大していきます。たとえば、労働者、女性、異教徒(無神論者)、子供、障害者。→動物?
・具体的な権利の拡大過程として、男子普通選挙権(労働者への公民権拡大)。女性参政権、フェミニズム(女権拡大論)。植民地の独立。公民権運動。
児童の権利に関する宣言(1959年)。児童の権利条約(1989年)。児童を、保護の対象から、権利の主体へと捉え直します。
障害者権利条約(2006年)→障害者基本法改正、障害者差別解消法(2013年)へと繋がっていきます。

児童中心主義

児童中心主義:子供を「客体」として扱うのではなく、子供が「主体」となります。「教育する=教師や学校が主語」のではなく「学習する=子供が主語」へと転換します。

ジョン・デューイ John Dewey

・アメリカ出身。1859年~1952年。
・著書:『学校と社会』『民主主義と教育』
・キーワード:コペルニクス的転回。実験学校。問題解決学習。
・名言:「なすことによって学ぶ。」

エレン・ケイ Ellen Karolina Sofia Key

・スウェーデン出身。女性。1849年~1926年。
・著書:『児童の世紀』
・名言:「教育の最大の秘訣は、教育しないことにある。」←ルソーの消極教育の影響が指摘されています。

モンテッソーリ Maria Montessori

・イタリア出身。女性。1870年~1952年。
・著書:『幼児の秘密』『子どもの発見』
・キーワード:子供の家。感覚教育法。教具。自発性。整えられた環境。

特別支援教育

・平成19年の学校教育法改正により、すべての学校(幼稚園含む)で特別支援教育を推進することが明確となりました。
・「特別支援教育の推進について(通知)」2007年。
・「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」2012年。

特別支援教育の理念

共生社会:障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が活き活きと活躍できる社会です。誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を相互に認め合える全員参加型の社会です。
インクルーシブ教育:障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするためにも、障害のある子供が障害のない子供と共に教育を受けられる仕組みです。
教育的ニーズ:子供が必要としている支援です。
合理的配慮:障害のある子供が、他の子供と平等に教育を受ける権利を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子供にたいし、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるものです。体制面・財政面において、均衡を失した過度の負担は課しません。
ユニヴァーサル・デザイン:あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方です。

発達障害

発達障害:これまでの特殊教育の対象とはなっていなかった、知的な遅れのない障害のことです。
→LD(学習障害):知的発達に遅れはありませんが、聞く・話す・読む・書く・計算するなどの能力のうち、特定の分野に極端に苦手な側面が見られます。
→ADHD(注意欠如・多動症):注意力や衝動性、多動性などが年齢や発達に不釣り合いで、社会的な活動や学業に支障をきたすことがあります。
→自閉症スペクトラム:他者の気持ちを察することや周りの状況に合わせたりする行動が苦手だったり、特定のものにこだわる傾向が見られます。

学校の仕事

校内委員会:校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立し、実態把握や支援方策の検討等を行うために設けなければならない組織です。
特別支援教育コーディネーター:各学校における特別支援教育の推進のために、情報収集、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口となります。
個別の教育支援計画:特別支援学校では、ひとりひとりの教育的ニーズに応じた支援を効果的に実施するため、乳幼児期から学校卒業後までの一貫した長期的な計画を作成しなければなりません。作成にあたり、医療・福祉・労働などの関係機関と連携し、保護者の参画や意見を聞きます。
個別の指導計画:特別支援学校では、障害のある子供ひとりひとりの教育的ニーズに対応して工夫され、学校における指導内容・方法を盛り込んだ指導計画を作成しなければなりません。

復習

・新教育にかかわる人物を、著作やキーワードとともに押さえておこう。
・「特別支援教育」の理念と、学校や先生が携わる具体的な仕事について理解しよう。