▼語学・心カ・教福・服美・表現 11/17
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目次
前回のおさらい
・1958年版学習指導要領:高度経済成長。
・1977年版学習指導要領:オイルショック。
・臨時教育審議会。民営化、規制緩和の論理。
学習指導要領の変遷(3)
教育における市場原理
・学区制を廃止して学校選択制に転換しようとします。学校選択制の導入によって個性が伸張し、全体的にレベルアップします。
→バウチャー制度。私立学校も含めて競争原理に巻き込みます。
→学校民営化。すべてを競争原理に委ねます。
1998年の学習指導要領改訂
・「生きる力」の育成。教育内容の厳選、「総合的な学習の時間」の新設。
・世間一般が言ういわゆる「ゆとり教育」は、この時期の教育を指します。学校週五日制=1995年から月2回、2002年から完全実施されます。
・学校週5日制のめざすものは…
子どもたちの「生きる力」をはぐくむためには、豊かな体験が不可欠です。自然体験などが豊富な子どもほど、道徳観や正義感が身についているという調査結果も出ています。
・授業時間削減=公的部門の割合を減らし、市場に委ねる割合を増やすことです。公的な学校の時間を削減した分、私的に自由に使える時間が増えました。
・ゆとり教育の本質とは、「公・官/私・民」の配分の問題です。
聖域なき構造改革
*高校多様化:1990年代~。中高一貫校。総合学科。単位制高等学校。
*小泉純一郎:構造改革特区(2002年)。
・株式会社による学校設置の容認。
・不登校児童生徒等の教育を行うNPO法人で一定の実績等を有するものの学校設置の容認。
・大学設置基準の緩和(校地面積,運動場設置,空地確保の弾力化)。
・教員の特別免許状の授与権者として特区市町村教育委員会も追加。
・インターネットを利用した教育を行う大学・大学院についての各種施設基準の弾力化。
・「公私協力学校」の設置。
・学校施設の管理及び整備に関する権限を教育委員会から地方公共団体の長への移譲。
→小学校1年生から英語の授業を実施。
→小中一貫、9年間を4・3・2に区切って教育課程を実施。
→「市民科」や「情報科」を新設。
→小中高12年一貫教育で、授業を全部英語で行う。(構造改革特区第1号)
自由化、民営化、規制緩和、構造改革のデメリット
(1)本当に「個性」の育成につながるのでしょうか? 単に「序列化」が進行し格差が拡大するだけではないでしょうか?
(2)本当に質が向上するのでしょうか? 競争に際して不正を行う者が多いとどうなるでしょうか。
(3)教育は「サービス」なのでしょうか?
学力格差の拡大
・いわゆる「学力低下」の実態。
・授業時間削減:教育の市場化によって格差が拡大しました。十分な教育資金で子供を塾にやれる家庭と、アルバイトをしてしまう子供がいる家庭との格差が広がります。
・学校選択制:文化資本の差によって格差が拡大しました。十分な教育情報を集める文化資本(金・時間・情報・人脈)がある家庭とない家庭の格差が広がります。
*春学期に扱った「自由のワナ」を参照のこと。
競争の底抜け
・賞味期限詐欺、耐震偽造詐欺←規制緩和によって未熟なプレイヤーが競争に参加してしまったのが問題です。
・競争の質。真っ当に努力した者が報われているのでしょうか?
・たとえば2011年の大津市いじめ問題。大津市には学校選択制が導入されていましたが、いじめは隠蔽されてしまいました。理屈通りなら学校選択制によっていじめがなくなってもいいのに、現実にそうならなかったのはなぜでしょうか?
教育とサービス消費
・教育は本質的に「サービスの消費」ではなく、生徒との共同的な「価値の生産」の過程です。
・学生に人気のある先生は、本当に良い先生でしょうか?
復習
・「ゆとり教育」という見かけの教育問題の下で、本当に進行していた自由化・民営化・規制緩和・構造改革について把握しよう。
・市場化のメリットとデメリットについて押さえよう。
予習
・「生きる力」について調べておこう。