道徳教育指導論-6

第6回=11/2

前回のおさらい

・道徳科の評価の特徴=生徒を比べるのではなく、個人的な成長に注目します。進学資料には使用しません。

道徳教育の歴史(日本編)

教育勅語(1890-1945)

・1891年渙発、1948年失効確認(衆議院、参議院)。
・元田永孚(もとだながざね)と井上毅(いのうえこわし)が中心となって作成します。儒学主義と近代主義がミックスされた内容になっています。

教育勅語の構造

・3つのパートに分けると、理解しやすくなります。
・教育勅語には「いいことも書かれている」とか「普遍的なことも書かれている」と主張する人々は、第二パートにしか注目していません。しかし、もし単に「いいことも書かれている」だけで良いとしたら、聖書でもコーランでも論語でも良くなってしまいます。なぜ、聖書でもコーランでも論語でもなく「教育勅語」である必要があったのでしょうか。
・教育勅語の性格を理解する上で決定的に重要なのは、第一パートと第三パートです。第一パートの理解を抜きにして第二パートを語ることはできませんし、語る意味がありません。
・第一パートを理解するためには、日本神話(とくに天孫降臨)に対する知識が不可欠です。
・第二パートの徳目は、「儒教」の伝統的徳目に近代主義を混ぜたものです。そもそも、教育勅語は本当に日本の伝統に合致していたのでしょうか?

教育勅語の失効

・1948年、衆議院と参議院での決議。何が問題だったのでしょうか?
・問題は「主権在君」と「神話的国体観」にありそうです。

学習指導要領(1947年版と1958年版)

・1947年版学習指導要領には道徳科がありませんでしたが、1958年版学習指導要領には「特設道徳」が登場します。

逆コース

・中国(1949年)と朝鮮半島(1950年)の情勢が変化し、冷戦体制によって、GHQの方針が転回しました。
サンフランシスコ平和条約(1951年)。
池田ロバートソン会談(1953年)
・教育二法(1954年)。「教育公務員特例法の一部を改正する法律」と「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」。
・地方教育行政の組織及び運営に関する法律(1956年)。教育委員選出を公選制から首長による任命制に転換。

試験のためのチェックポイント

道徳教育の目的

□教育基本法が目指す教育の目的「人格の完成」に道徳教育がどのように関わっているか理解し、説明できる。
□学習指導要領が掲げる「生きる力」を実現するために道徳教育が果たすべき役割について理解し、説明できる。
□学習指導要領に示されている「豊かな心」と道徳教育の関係について理解し、説明できる。

道徳教育と道徳科の関係

□「道徳教育」と「道徳科」の違いと関係について、説明できる。
□学校教育全体の中で道徳科が果たすべき役割と意義について、説明できる。
□国語や理科等の「教科」が道徳教育にどのように関係するか、学習指導要領に即して理解し、具体的に説明することができる。
□道徳が教科化されたことで、何がどのように変わったか説明できる。

道徳科の内容と方法

□道徳科で何を教えるのか、領域が4つに区分されていることなど、学習指導要領に則って内容を理解している。
□「考え、議論する道徳」への転換の意義について理解し、授業のあり方を具体的にどう変えていかなければならないか、説明できる。
□「自己を見つめる」「物事を広い視野から多面的・多角的に考える」「人間としての生き方についての考えを深める」という道徳科の方法が、具体的にどういうことか説明できる。

道徳科の評価

□道徳科における評価の役割と意義を理解している。
□道徳科の評価について、他の教科等とは異なる特徴を理解している。