【紹介と感想】『ある日、クラスメイトがロボットになったら!? イギリスの小学生が夢中になった「コンピュータを使わない」プログラミングの授業』

【紹介】プログラミング教育の本です。実際にイギリスで実践された授業の事例が豊富に示されています。特徴は、コンピュータを使わずに授業を行なうことです。
コンピュータを使わなくても、プログラミングに必要な能力は伸びます。たとえば、論理的思考能力や、粘り強くデバッグを行なう忍耐力や、アルゴリズムに関わる基本的な知識(逐次処理や条件分岐、プロシージャの概念)など、コンピュータ無しでも身につけることができます。そしてそれは、単にプログラミング教育だけでなく、ピアジェやヴィゴツキーが言うような、普遍的な認識能力の発展(構成主義)と密接に関連しています。

【感想】多少、上級者向けの本のような気がする。プログラミング教育の基本が分かっていない教師がいきなり本書を手にとっても、何を言われているのか理解するのは難しそう。逆に言えば、基本を理解していると、意味深い実践が行なわれていることに感心するはずだ。

私が驚いたのは、単にアルゴリズムの基礎だけではなく、インターネットの構造や仕組みや実際の働き方とか、あるいはパケットやルーターの概念とか、さらには暗号化の仕組みなど、ネットワークに関する知識を全面的に扱っているところだ。日本のコンピュータ教育はスタンドアローンの範囲で終わっているが、イギリスではネットワーキングこそが本質になっている。コンピュータについて詳しい人ほど、これらの実践に感心するだろうと推測するが、どうか。

ヘレン・コールドウェル、ニール・スミス『ある日、クラスメイトがロボットになったら!? イギリスの小学生が夢中になった「コンピュータを使わない」プログラミングの授業』学芸みらい社、2018年